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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 屈斜路湖のクッシーに興味を持つ咲子なら、私が見た光の話などすぐに流してくれるかと思った。「ふふふ」と笑ってから「長谷川さん、お酒の飲み過ぎですよ」と私を諫めてその話はそこで終わるはずだった。
 咲子の表情をずっと窺っていたわけではないが、咲子の顔色が変わる前、一瞬咲子の呼吸が止まったのではないかと私は思った。予想外の話に戸惑い、それにどう対処していいのかわからない様子を私は感じたのだ。
 咲子に気に入られようなんて今でも思っていない。だが不味い話(咲子にとって)をしてしまったと私は後悔した。
 案の定、食事をしている間ずっと気まずい雰囲気に私と咲子は包まれていた。居心地の悪い空気はその後も続いた。夕食を済ませて私と咲子は部屋に戻った後、昨日同様二人でホテルの温泉に向かった。
 会話がぷつりと途切れたわけではないが、重苦しい空気は私と咲子を追いかけてきた。
 温泉に浸かっていても私は咲子のことが気になった。どうして咲子は、私が話した光の話に反応したのだろう? 長年連れ添った夫婦なら「あんた何馬鹿な事言ってんのよ」で済む話だ。でも咲子はそう受け流すことをしなかったのだ(できなかったと言っていいかもしれない)。
 とにかく光と言うワードは禁句だ。咲子の機嫌のためではない。折角の北海道旅行を台無しにしたくないからだ。
 部屋に戻ると、テーブルの上には昨日と同じサッポロが置かれていた。咲子には炭酸水、そしてここに来る途中で買ったワインも用意されていた。
 昨日と全く変わらないサッポロのコクとキレ。咲子は私が注いだ炭酸水をグラスの三分の一くらい飲んで、私にこう言った。
「これ頂いていいかしら?」
「どうぞ」
 酒を一人で飲むのは何となく気が引ける。私は咲子からワインを受け取った。ワインのキャップシールは竹内によって既に剝がされており、後はスクリューを使ってコルク栓を抜くだけだった。
 私のために準備されていたワイングラスにワインを注いでそれを咲子に渡した。
「ありがとう」
 咲子はワイングラスを軽く揺らしてからグラスに鼻を近づけて香りを楽しんだ。グラスに口をつけてそれを一口口に含んだ。口中でもう一度香りを楽しんでから赤い液体を喉の奥に華麗に送り込む。
 私はその様子をずっと見ていた。咲子も美しい、そしてワインを飲む咲子もまた美しかった。
 それから咲子はこう切り出したのだ。
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