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千一夜
第41章 第七夜 訪問者 真実?
「お嬢様」
 竹内の声で昨日の記憶がぷつりと消えた。
「何?」
「高彦様がこちらに見えておられます」
「兄が今北海道にいるの?」
 遠山高彦。咲子の兄だ。歳は私より一つ下の四十七。
「はい」
「どうして?」
「あの……お買い物をされているようで」
「買い物? ああ、夏の函館と札幌は終わったのね?」
「はい」 
 私には咲子と竹内の話はちんぷんかんぷんだった。買い物とか夏の函館札幌とはどういう意味なのだろうか。
「だからお義兄さんからちくりちくり言われるのよ。兄が何を買おうと私には関係ないけど、そのために遠山の家がめちゃくちゃになってしまうわ。お父さんもはっきり言えばいいのよ」
 咲子は、血の繋がった遠山家の長男を兄と呼び、姉婿をお義兄さんと呼ぶ。
「買い物とか夏の函館札幌ってどういうこと?」
 私は咲子に疑問をぶつけてみた。
「ごめんなさい」
「いやいいんだ」
「兄は競走馬を持っているの」
「競走馬って競馬の?」
「そう」
「……」
 そうだった。遠山の社長は競走馬を持っていると誰かから聞いたことがある。ただ私にはそういう世界は無縁だったので軽く聞き流していた。
「所有馬のレースを見て、開催が終わると北海道の牧場を回るの、仕事もしないで。それがお義兄さんにはおもしろくない。お義兄さん、わざわざ遠山の家に来て愚痴をこぼすのよ。本当に困りますって言う感じで父に話すわけ」
「会長は何と?」
「お義兄さんの言うことは誰だ聞いてもその通りだと思うわ。でも父にとって兄は大事な跡取り息子」
「なるほど」
「いつも話は有耶無耶で終わるわ」
「いつも?」
「そう、いつも」
「……」
「ああ、この話はここで終わり。折角の北海道が台無しになるわ」
「お嬢様、申し訳ございませんでした」
「いいのよ。悪いのは兄なんだから。でもこの北海道で兄になんか会いたくないわ。竹内、兄のいそうなところは避けてね」
「承知いたしました」
 レクサスのハンドルを握る竹内はそう言って頭を軽く下げた。
「今から行くところも湖なんです」
「湖?」
「湖はもう飽きた?」
「でも咲子さんがチョイスした湖だから屈斜路湖とは全くの別物ですよね」
「部屋からぼんやりと湖だけを見ている。悪くないでしょ?」
 繋いでいる咲子の手に力が入るのがわかった。昨夜の続きの催促?
「ええ」
 早く咲子と二人だけになりたかった。
 
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