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千一夜
第5章 第二夜 パヴァーヌ ①

主人と出会ったのは、私が十一で主人が二十のときだった。当時私は小学六年で翌年中高一貫の女子中学を受験する受験生だった。ただ、成績が芳しくなかった。
それで私の姉が、その頃付き合っていた同い年の東大生の早川健太を両親に紹介したのだ。早川健太、今私の主人。父は猛反対だった。姉に彼氏がいることに腹を立て、そして私を教える先生が男であるということが気に入らなかったらしい。逆に母は主人が私を教えてくれることを喜んだ、と姉から聞いている。
勉強嫌いな私はうんざりした。東大、男の先生、イコール融通の利かない堅物。まだ見ぬ姉の彼氏を想像しただけで私は憂鬱になった。
ところが私の部屋に入ってきて「早川健太です、よろしく」と挨拶した背の高い主人を見て私は主人に一目ぼれした。目が大きくて眉も太かった。鼻筋も通って鼻も高い。ただ、髪の毛がぼさぼさしているところだけは唯一好きになることができなかった。
私が主人のぼさぼさの髪を見ていたら「ごめん、研究が忙しくて床屋にいけないんだ」と頭をかいてにこりと笑った。その笑顔が素敵だった。私は主人に恋をした。
私は両親に家庭教師の回数を増やしてくれと頼んだ。もちろんそれは主人に会いたいからで、受験や勉強のことなんか頭になかった。
毎日会いたかったが、主人の都合もあって週四回私は主人を姉から奪った。
翌年の受験で私は志望する中学に合格した。家庭教師はそこで終わり、のはずだったが、私は中学に入学した後も主人に勉強をみてもらった。父は反対したが、母は私の希望を聞いてくれた。
家庭教師だった主人は融通の利かない堅物ではなかった。冗談も言うし、授業でも話の進め方が抜群にうまかった。だから嫌いな勉強も主人とならむしろ楽しかった
私が中学二年くらいからだと思う。私と主人との会話に遠慮がなくなっていた。
「先生、初体験はいつ?」
私がそう訊ねる。
「秘密」
主人はそう答えた。
私と主人はゲームを始めた。ルールは簡単。目標とする学年順位を決める。それをクリアしたら、主人が私にキスをする(いつも私はエッチなことを主人にねだった)。そんな感じでゲームは始まった。
ゲームは私の全勝だった。このゲームには敗者はいない。私が全勝することで、父と母の主人に対する信頼はさらに増していった。
これは主人から後で聞いた話なのだが、時間給が倍になったそうだ。
それで私の姉が、その頃付き合っていた同い年の東大生の早川健太を両親に紹介したのだ。早川健太、今私の主人。父は猛反対だった。姉に彼氏がいることに腹を立て、そして私を教える先生が男であるということが気に入らなかったらしい。逆に母は主人が私を教えてくれることを喜んだ、と姉から聞いている。
勉強嫌いな私はうんざりした。東大、男の先生、イコール融通の利かない堅物。まだ見ぬ姉の彼氏を想像しただけで私は憂鬱になった。
ところが私の部屋に入ってきて「早川健太です、よろしく」と挨拶した背の高い主人を見て私は主人に一目ぼれした。目が大きくて眉も太かった。鼻筋も通って鼻も高い。ただ、髪の毛がぼさぼさしているところだけは唯一好きになることができなかった。
私が主人のぼさぼさの髪を見ていたら「ごめん、研究が忙しくて床屋にいけないんだ」と頭をかいてにこりと笑った。その笑顔が素敵だった。私は主人に恋をした。
私は両親に家庭教師の回数を増やしてくれと頼んだ。もちろんそれは主人に会いたいからで、受験や勉強のことなんか頭になかった。
毎日会いたかったが、主人の都合もあって週四回私は主人を姉から奪った。
翌年の受験で私は志望する中学に合格した。家庭教師はそこで終わり、のはずだったが、私は中学に入学した後も主人に勉強をみてもらった。父は反対したが、母は私の希望を聞いてくれた。
家庭教師だった主人は融通の利かない堅物ではなかった。冗談も言うし、授業でも話の進め方が抜群にうまかった。だから嫌いな勉強も主人とならむしろ楽しかった
私が中学二年くらいからだと思う。私と主人との会話に遠慮がなくなっていた。
「先生、初体験はいつ?」
私がそう訊ねる。
「秘密」
主人はそう答えた。
私と主人はゲームを始めた。ルールは簡単。目標とする学年順位を決める。それをクリアしたら、主人が私にキスをする(いつも私はエッチなことを主人にねだった)。そんな感じでゲームは始まった。
ゲームは私の全勝だった。このゲームには敗者はいない。私が全勝することで、父と母の主人に対する信頼はさらに増していった。
これは主人から後で聞いた話なのだが、時間給が倍になったそうだ。

