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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
 確かにラッシュアワーを緩和することができるかもしれない。だが、遠山高獅が「限りなくボストンシンフォニーホールの音に近づけろ」と檄を飛ばして作らせたクラッシック専門の音楽ホールをただで借りることなどできるはずがない。
 費用のことなど考えずに使えるのは、遠山機械工業の社員たちで構成されているアマチュアのオーケストラのみ。
 一階席のキャパが八百、二階席は二百。この本格的な音楽ホールを一時間借りただけで、若手職員の一月分の給料が必要になる。
 本当は喜ぶべきことなのだが、私の街には吹奏楽部がある中学は九つあり、そしてその中学校のいずれかが毎年全国大会に出場し、毎年金賞を受賞している。おかげで私の街は音楽のレベルの高いと県内外から言われている。
 そういう街だからこそ、遠山が作る音楽ホールは、音楽をする者、これから音楽を目指す者にとっては大きな希望なのだ。口が裂けてもそれを心待ちにしている人たちに使用料が高くて借りることができませんとは言えない。
 咲子の父が言った「自由に使え」とは「ただで貸す」ということではない。
「こけら落としはベートーヴェンの第九と決めている。ヨーロッパのいくつかのオーケストラに演奏のオファーは出している。ありがたいことにオファーを出したすべてのオーケストラが新しいホールに興味を持ってくれてな。ベートーヴェンの中でも高鶴は特に第九が好きだった。高鶴の名のついた音楽ホールで高鶴のための第九だ」
 遠山高鶴音楽ホール。これか新しい音楽ホールの名前となる。
「どうした? もう金の勘定をしているのか?」
「……」
 金の勘定とは新しいホールの使用料のこと。
「高鶴の音楽ホールを自由に使うことができるのはうちのオーケストラだけだ」
「……」
 咲子の父が言った「うちのオーケストラ」とは遠山機械工業のアマチュアオーケストラのことだ。
「君のことだから、咲子と結婚してもこのことでは私に甘えるなんてことはしないだろう。君はわかっているはずだ。私に甘えても無駄だと言うことを」
「……」
「公共経済学を理解しただけでは市長は務まらん。街をもっともっと豊かにしろ。どうしたら街が豊かになるのか考えるんだ。わかったな」
「はい」
「咲子のことは頼んだぞ」
「必ず幸せにします」
「当り前だ。咲子を泣かせたら君を地獄に落とす。遠慮はしないからな」
「はい」
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