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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「しばらくは竹内の運転する車に君は乗ることができない」
 咲子の父は私にそう言った。
 私が市長になったとしても、咲子の父は私が竹内の運転する車の後部座席に座ることを許してくれない。
 おそらく咲子もそうなるに違いない。市長が国産のコンパクトカーで、細君が竹内が運転する高級車の後部座席では釣り合わない。
 私が運転する車の助手席に、咲子が座ることを想像するのが難しい。それでも無理やり想像してみると、思わず吹き出しそうになった。
「どうかされましたか?」
 竹内はルームミラーで私の様子を見てそう言った。
「いや、会長から竹内さんの運転する車には乗れなくなると言われたんですよ。私はいいんですが、咲子さんが可哀そうで」
「ははは、長谷川さんは本当にお優しい」
「いやいや、竹内さんが運転する車は、私には分不相応なんです。でも咲子さんは私と違うから」
「市長になられてもお休みとかあるんですよね?」
「ええ」
「長期のお休みとかあるんですか?」
「あります。ただ、市長は何かあれば必ず役所に向かわなければなりません」
「何かなければいいわけですね?」
「はい」
「今度は九州をご案内します。九州も素晴らしい場所がたくさんあります」
「はぁ~、行ってみたいな」
「ははは」
 竹内の運転する車が私の家に着いた。私の車も竹内に車に続いて到着した。車から降り、私は竹内に「ありがとうございました」と言って頭を下げた。
 私の車を運転してきた六十代くらいの男が「お車の鍵です」と言って私に頭を下げた。その男は竹内の車の後部座席ではなく助手席に乗り込んだ。
 竹内とその男は、車が発進する前にもう一度私に「それでは失礼いたします」と言った。
 小さな平屋建ての家。玄関のドアを開けて家の中に入る。誰もいない家の中に向かって私は「ただいま」と言った。
「はぁ~」またため息が漏れた。これが自分の家だ。そしてこれが現実だ。この家と役所の仕事が私の本当の生活だ。
 荷が重い。仮にも市長は街のリーダーだ。街を先導していく資格が私にあるのだろうか。後戻りはできない。投げ出すなんてこともできるはずがない。思い描いていた人生とは少し、いや、だいぶ違うが覚悟しなければならない。
 腹を決める。だがこの先も「はぁ~」というため息とは別れられないような気がした。
 まぁ、それならそれで仕方がないのだが。
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