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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
 熱いシャワーを浴びて布団に入る。今何かを考えても結論が出るわけではない。明日から私はどうなるのだろう。不安がまた次の不安を私に運んでくる。
 市長になんかなりたくない。市政運営には遠山の力が必要不可欠なのだ。この街のトップは市長ではなく遠山機械工業の会長だ。それはこの街の住民すべてが知っている。市長がお飾りだなんて実に滑稽だ。
 もうたくさんだ。目を瞑り、睡魔が私を誘ってくるのを待った。
 ストンと私は眠りの世界に落ちた。何事も起こらずに朝を迎える。有難いことだ。このまま朝を迎えることができる。ところが……。
 私は眠りの世界で迷子になった。感じるのは辺りが真っ暗……いやいや違う、真っ白……?  わからない。そもそも色なんて眠りの世界にあるのだろうか。残念ながら私の目は眠りの世界の色を正確に認識することができない。
 勘弁してくれ。これじゃ休むことができないじゃないか。私は無理やり眠りの世界から抜け出そうとした。私はにわかごしらえの目覚まし時計を眠りの世界に持ち込んで鳴らそうとしたのだが、けたたまし音が鳴り響くどころか、その世界は一層静寂さを増したのだ。
 前に進むことも、後ろに引き下がることもできない。そんなとき、多くの人はこう思うだろう。もうどうにでもしてくれ、死ぬことはないんだから……と。
 ちょっと待て。私はとても大事なことを忘れている。私は眠りの世界で迷子になったと自覚している。迷子……とは。つまり私はどこかに向かっていたのだ。だが私にはこの世界に知り合いなんていない。
 多分この世界にはスーパーなんてないだろうし、大型書店もないはずだ。二月ほど前に行った健康診断でも異常はなかったのだから、病院に向かっているわけでもないだろう。
 市長選は年末だ。咲子と一緒に投票に行くには早すぎる。私はどこに行こうとしているのだろうか。
 今私が理解してる事実を整理してく。
 私はこの世界に一人でいる。だが私の目はこの世界の色を正しく把握していない。今と年末の区別がつけられるのだから、眠りの世界の時間は、私が暮らしている世界と同じ時を刻んでいる可能性がある。パラレルワールドっていうことなのか。
 あほくさくなってきた。眠りの世界がパラレルワールドだなんて当り前じゃないか。だって私は生きている。死んでなんかいないのだから。
 あれ? 何かが見えるぞ。
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