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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
今、私がいる場所は異世界ではない。敢えて言うなら私は並行時空の中にいる。立っているのか、寝ているのか、それとも宙に浮いているのか私にはわからない。並行世界の中で自分の姿はどうなっているのだろうか。私は私という姿をしているのか? 掌に刻まれている皺を見たかった。つま先を私は見たかった。しかし私の目は、私の手と足を認めることができなかった。
こんな世界にいるのは御免被る。だがこの空間から私は抜け出せないのだ。私は必死に脱出しようとしてる。この世界にはおかしな重力でもあるのだろうか。そのせいで私はここから抜け出せないのだろうか。
そんなとき……。
ぼんやりと見えたのは女の顔だった。女は笑っていた。どうやらこの女は私に悪意を抱いていない。当たり前だ。私は女から恨まれるようなことをしたことなど一度もない。
あっ! この女は京子だ。この目、この鼻、そしてこの口に見覚えがある。いやいや違う、沢田絵里だ。でも私には京子なのか、それとも沢田絵里なのか判別することができない。
だから私は女にこう訊ねた。
「京子ちゃんなのか?」
「……」
女は笑っているだけだった。
「沢田絵里さんですか?」
「……」
女は何も言わずに笑っている。もしかしたら、女には私の声が届いていないのかもしれない。
あっ!私が驚くのは何度目だろうか。女は全裸だった。ただ、首から下はすりガラスに隠されているようでぼんやりとしたままだ。
すりガラスの向こうに見える女が裸だと言うことはわかる、巨乳ではないが綺麗な形をした乳房。くびれ、それから無毛のような局部(もし女が京子なら、すりガラスさえなければ薄い陰毛が見えるはずなのだが)。
ごくりと唾を飲んだ。私も女の裸に欲望を抱く普通の男だ。市長候補であっても聖人君子になることは無理のようだ。
「亮ちゃん」
「京子ちゃん?」
私を亮ちゃんと呼ぶのは立花京子だけだ。
「市長」
「沢田さん? 沢田さんですか?」
京子は私を市長と呼ぶはずがない。
女が私に近づいてきた。
「教えてくれ、君は京子ちゃんなのか? それとも沢田さんなのか? 頼む」
「……」
女は何も言わない。ただ笑い顔を私に向けているだけだ。
不気味な世界だ。でも私は何かを期待している。
こんな世界にいるのは御免被る。だがこの空間から私は抜け出せないのだ。私は必死に脱出しようとしてる。この世界にはおかしな重力でもあるのだろうか。そのせいで私はここから抜け出せないのだろうか。
そんなとき……。
ぼんやりと見えたのは女の顔だった。女は笑っていた。どうやらこの女は私に悪意を抱いていない。当たり前だ。私は女から恨まれるようなことをしたことなど一度もない。
あっ! この女は京子だ。この目、この鼻、そしてこの口に見覚えがある。いやいや違う、沢田絵里だ。でも私には京子なのか、それとも沢田絵里なのか判別することができない。
だから私は女にこう訊ねた。
「京子ちゃんなのか?」
「……」
女は笑っているだけだった。
「沢田絵里さんですか?」
「……」
女は何も言わずに笑っている。もしかしたら、女には私の声が届いていないのかもしれない。
あっ!私が驚くのは何度目だろうか。女は全裸だった。ただ、首から下はすりガラスに隠されているようでぼんやりとしたままだ。
すりガラスの向こうに見える女が裸だと言うことはわかる、巨乳ではないが綺麗な形をした乳房。くびれ、それから無毛のような局部(もし女が京子なら、すりガラスさえなければ薄い陰毛が見えるはずなのだが)。
ごくりと唾を飲んだ。私も女の裸に欲望を抱く普通の男だ。市長候補であっても聖人君子になることは無理のようだ。
「亮ちゃん」
「京子ちゃん?」
私を亮ちゃんと呼ぶのは立花京子だけだ。
「市長」
「沢田さん? 沢田さんですか?」
京子は私を市長と呼ぶはずがない。
女が私に近づいてきた。
「教えてくれ、君は京子ちゃんなのか? それとも沢田さんなのか? 頼む」
「……」
女は何も言わない。ただ笑い顔を私に向けているだけだ。
不気味な世界だ。でも私は何かを期待している。

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