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千一夜
第45章 第七夜 訪問者 戦い
体が鉛のように重い。ピタリと閉じた瞼を開けようとしても、私の中にいる何かがその必要はないと甘く囁く。疲れているんだ、一日くらい役所を休んでも大丈夫だ。心が大きく揺れる。
それでも会社員の多くは(すべてと言っていいかもしれない)、自分の体に鞭を打って鉛と化した体を起こす。
大昔のテレビのコマーシャルを思い出した。二十四時間働けますか? と栄養ドリンクを売る製薬会社が番組の視聴者に問いかけていた。
二十四時間働く? 馬鹿を言うな、今はそんな時代じゃない。当時のCMを今テレビで流したら大問題になる。時代は変わったのだ。そしてこれからも世の中は変化し続ける。
ようやく目を開けることができた。自分の家の天井が見えた。「はぁ~」と私は大きくため息をついた。戦いがいよいよ始まる。もう下りることなどできない。覚悟もした。後はこの戦いに勝つだけだ(私は勝てるだろうか……)。
体を起こそうとしたとき、私は違和感を覚えた。その妙な感じは下腹部からやってくる。正確に言うとパンツの中から。まさか……。
私はパンツの中に手を入れた。はっとした。私は夢を見ながら射精していたのだ。五十前の男の夢精なんて聞いたことがない。ひょっとしたら私の夢はまだ覚めていないのだろうか。いやいや。私の意識ははっきりしている。目を動かせば見覚えのあるものばかり。それにパラレルワールドとは違ってそれぞれのものに色がしっかりついている。
朝シャワーなんて習慣は私にはないが、だからと言ってこのまま役所に行く気にはなれない。私はベッドから出るとすぐ浴室に向かった。
熱いシャワーを浴びる。顔も頭も洗い、寝ている間にかいた汗を流した。言うまでもないが、ペニスは念入りに洗った。
朝食はいつものトーストとハムエッグ、それにコーヒー。質素な朝ごはん。質素という言葉、なんだかとても上品だ。そして都合よく使われる言葉。質素な朝ごはんとは、つまり簡単な朝食ということだ(作るのは簡単で食べるのにも時間はそんなにかからない)。
シャツを着てネクタイを締める。鏡に映る自分の顔を見て私はこう言った。
「冴えない顔しているな。お前は本当に市長候補なのか? お前なんかが市長になっていいのか? この街は大丈夫か?」
鏡に映る私は、私の問いに答えてはくれなかった。
「よし!」
玄関で私は気合を入れた。ドアを開けると……。
それでも会社員の多くは(すべてと言っていいかもしれない)、自分の体に鞭を打って鉛と化した体を起こす。
大昔のテレビのコマーシャルを思い出した。二十四時間働けますか? と栄養ドリンクを売る製薬会社が番組の視聴者に問いかけていた。
二十四時間働く? 馬鹿を言うな、今はそんな時代じゃない。当時のCMを今テレビで流したら大問題になる。時代は変わったのだ。そしてこれからも世の中は変化し続ける。
ようやく目を開けることができた。自分の家の天井が見えた。「はぁ~」と私は大きくため息をついた。戦いがいよいよ始まる。もう下りることなどできない。覚悟もした。後はこの戦いに勝つだけだ(私は勝てるだろうか……)。
体を起こそうとしたとき、私は違和感を覚えた。その妙な感じは下腹部からやってくる。正確に言うとパンツの中から。まさか……。
私はパンツの中に手を入れた。はっとした。私は夢を見ながら射精していたのだ。五十前の男の夢精なんて聞いたことがない。ひょっとしたら私の夢はまだ覚めていないのだろうか。いやいや。私の意識ははっきりしている。目を動かせば見覚えのあるものばかり。それにパラレルワールドとは違ってそれぞれのものに色がしっかりついている。
朝シャワーなんて習慣は私にはないが、だからと言ってこのまま役所に行く気にはなれない。私はベッドから出るとすぐ浴室に向かった。
熱いシャワーを浴びる。顔も頭も洗い、寝ている間にかいた汗を流した。言うまでもないが、ペニスは念入りに洗った。
朝食はいつものトーストとハムエッグ、それにコーヒー。質素な朝ごはん。質素という言葉、なんだかとても上品だ。そして都合よく使われる言葉。質素な朝ごはんとは、つまり簡単な朝食ということだ(作るのは簡単で食べるのにも時間はそんなにかからない)。
シャツを着てネクタイを締める。鏡に映る自分の顔を見て私はこう言った。
「冴えない顔しているな。お前は本当に市長候補なのか? お前なんかが市長になっていいのか? この街は大丈夫か?」
鏡に映る私は、私の問いに答えてはくれなかった。
「よし!」
玄関で私は気合を入れた。ドアを開けると……。

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