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千一夜
第6章 第二夜 パヴァーヌ ②
 思考がすべて停止した。何も考えられない、いや何も考えたくない。私は呼吸をしているのだろうか? 私は意志を持たない肉の塊になった。
 私がどう足掻こうが姉と主人の婚約は取り消されることなどない。私は姉と主人の婚約を聞いてからどう暮らしていたのかをよく覚えていない。
 覚えていることと言えば中間テストの結果が悲惨であったということぐらいだ。勉強などしなかったのだから、それはなるべくしてなった当然の結果だ。
 そして事件が起こった。事件は中間テストが終わった金曜日の翌々日の日曜日に起こった。姉は仕事が終わっても帰宅しなかった。姉はどこかに行ってしまった。姉がいなくなったのだ。姉は一度も外泊などしたことがない。
 月曜の早朝、母は主人に連絡を取った。だが、姉は主人のアパートには行っていなかった。勤め先の美術館に連絡すると姉は日曜日に休みを取っていたことが分かった。姉の友人数人に訊ねても、姉は友人宅には行っていなかった。
 姉が失踪した。誰にも何も言わずに、そして何かを書き記したものも残さずにいなくなってしまった。
 月曜以降も母は姉の勤め先である美術館にも姉の友人にも何度も何度も連絡を取った。もちろん主人にも。でもなんの手掛かりも掴むことができなかった。
 警察には水曜の午前に届を出した。成人した女子の家出。事件性が認められなければ、警察の動きなどたかが知れていいる。それでも何かに頼らなければこの状況を打破できない。
 父はいくつかの興信所などにも姉の失踪について調査(捜索)の依頼をした。
 しかし姉の消息は一向につかめる気配がなかった。
 怒る姿しか見たことがない父が変わった。母にも私にも何も話さなくなった。母の口数もだんだん少なくなっていった。母が誰もいないところでいつも泣いていると、通いのお手伝さんが私に教えてくれた。
 家の中がだんだん暗くなっていった。もっとも頑固でワンマンな父親がいるだけで家には一つも明るいところなんてなかったが、それでも家の中には重苦しい空気が漂い始めた。父も母も、そして私も家の中では一言も話さなくなった。
 私は救いを求めた。私が今頼れる相手は主人しかいない。私は世田谷の松原に住む主人を訪ねた。
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