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千一夜
第48章 第7夜 訪問者 正体
「ちょっとお訊ねしてよろしいかな?」
 樋口は車を宿の前に止めるとそう切り出した。
「何でしょう?」
「ご主人、取材を受けた言うてましたけど、今も取材中でっか?」
 地元のマスコミの取材は東京で終わっている。
「いや、奈良の旅は私たちの新婚旅行です。この旅行についてマスコミは私たちに取材を申し込んでいません。仮に申し込んだとしてもお断りします」
 私はそう答えた。
「樋口さん、どうしてそうお思いなの?」
 咲子が樋口にそう訊ねた。私もなぜ樋口がそう思ったのか知りたかった。
「いやね、ルームミラーで後ろを確認するといつもシルバーのプリウスがおったんですよ。大阪からずっとやさかい、洞川温泉でお二人の取材かなと思いましてな。違うんでっか?」
「……」
「……」
 私と咲子は無言で顔を見合わせた。咲子の驚いた顔。咲子も私の驚いた顔を見たはずだ。そして私と咲子は同時に後ろを振り返った。シルバーのプリウスはいなかった。
「何か変なこと言うてすんまへんでしたな」
 今までとは違う私と咲子の様子に気付くと樋口は恐縮してそう言った。
「とんでもない。樋口さんのお陰で楽しく過ごすことができました」
「そうよ、樋口さん、ありがとう。また明日もよろしくね」
 咲子が私の後に続いてそう言った。
「洞川の温泉でのんびりしなはれ。市長になると大変なんやろから、二人で楽しく過ごしなはれ。ほんま仲のええご夫婦や」
「ふふふ」
 咲子が笑った。
「樋口さん、運手お疲れさまでした」
 私は樋口に礼を言った。
「何言うてまんねん。これが私の仕事でんがな。ははは」
 樋口は豪快に笑った。
 私たちが樋口の車から降りると、樋口も車を降りてトランクから私たちのキャリーケースを出した。
「ほなまた明日伺います」
「よろしくお願いします」
 私はそう言って樋口に頭を下げた。咲子も私に倣った。
 宿の前で樋口の運転する車が見えなくなるまで、私と咲子は樋口を見送った。それから私と咲子は、樋口の車が消えた通りをしばらく見ていた。
 私の頭の中にある言葉が浮かんだ。それは“正体”。私と咲子に纏わりつく“正体”。
 おそらく、いや違う、間違いなくあの女が私と咲子をここに誘ったのだ。あの女は一体何者なのだ? 沢田絵里の薄く笑う顔が頭を過る。
 そしてこの夜、私と咲子は沢田絵里の本当の姿に一歩近づくことになる。

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