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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
「ねぇねぇ亮ちゃん、見て、これ見てよ。凄いよこの旅館」
咲子は旅館のパンフレットを見ながらそう言った。
「いい部屋だな。それにいい眺めだ」
○○旅館四階虚空の間。窓から洞川温泉の街並みが見えた。
「こっちを最初に見てよ」
私は咲子の持っているパンフレットを覗いた。
「創業五百年!」
思わず声が大きくなった。
「凄くない? この旅館、五百年も続いているのよ」
「……」
パンフレットに修験者という文字があった。この洞川温泉は、五百年前から修験者らの宿になっているようだ。
現界から他界に向かう修験者らを見送り、過酷な修行を通して山が持つ不思議な力を身に着けた行者らを迎える宿。今、私と咲子はその宿にいる。
それから私と咲子は風呂に向かった。部屋にも風呂はついているのだが、さすがに大浴場には勝てない。知らない誰かと一緒でも手足を大きく伸ばせる風呂がいい。
何も考えすに温泉に浸かる。このときばかりは選挙のことは忘れる。幸いなことに私はずっと大浴場を独り占めにしていた。咲子も私同様、一人で女風呂を独占していたのだが……。
風呂から上がり、私は館内のミニ資料館の展示物を見ていた。五百年という長い時間呼吸してきた資料。
「いらっしゃいませ」
三十代半ばくらいの女性の従業員が、私にそう声を掛けた。
「こんにちは。すみません、この旅館は今日満室ですか?」
この宿は一日六組限定で宿泊を受け付けている。
「お陰様で本日は満室でございます」
従業員はそう答えた。
「今日はお世話になります」
私がそう言うと。
「どうぞごゆっくりおくつろぎください」
と従業員はそう言って、私に深くお辞儀をした。
「亮ちゃん、ここだったの」
「ああ。咲子、これ見て見ろよ」
「これって昔の宿帳?」
「そうだ。どんなに高い金を払っても買うことが出来ないこの宿の歴史だ」
「凄いわね」
「温泉はどうだった?」
「とってもいいお湯だったわ。それにずっと一人だったし」
「君もか?」
「亮ちゃんも?」
「俺もずっと一人だった。風呂の中でぼーっとしている顔を誰にも見られなくてよかったよ」
「亮ちゃんのぼーっとした顔見たかったな、ふふふ」
何だろう? 何かが変だ。だから私は咲子にこう訊ねた。
「あのさ、ちょっと訊きたいんだけど」
「何?」
「咲子は誰かに会った?」
「えっ? それどういう意味?」
咲子は旅館のパンフレットを見ながらそう言った。
「いい部屋だな。それにいい眺めだ」
○○旅館四階虚空の間。窓から洞川温泉の街並みが見えた。
「こっちを最初に見てよ」
私は咲子の持っているパンフレットを覗いた。
「創業五百年!」
思わず声が大きくなった。
「凄くない? この旅館、五百年も続いているのよ」
「……」
パンフレットに修験者という文字があった。この洞川温泉は、五百年前から修験者らの宿になっているようだ。
現界から他界に向かう修験者らを見送り、過酷な修行を通して山が持つ不思議な力を身に着けた行者らを迎える宿。今、私と咲子はその宿にいる。
それから私と咲子は風呂に向かった。部屋にも風呂はついているのだが、さすがに大浴場には勝てない。知らない誰かと一緒でも手足を大きく伸ばせる風呂がいい。
何も考えすに温泉に浸かる。このときばかりは選挙のことは忘れる。幸いなことに私はずっと大浴場を独り占めにしていた。咲子も私同様、一人で女風呂を独占していたのだが……。
風呂から上がり、私は館内のミニ資料館の展示物を見ていた。五百年という長い時間呼吸してきた資料。
「いらっしゃいませ」
三十代半ばくらいの女性の従業員が、私にそう声を掛けた。
「こんにちは。すみません、この旅館は今日満室ですか?」
この宿は一日六組限定で宿泊を受け付けている。
「お陰様で本日は満室でございます」
従業員はそう答えた。
「今日はお世話になります」
私がそう言うと。
「どうぞごゆっくりおくつろぎください」
と従業員はそう言って、私に深くお辞儀をした。
「亮ちゃん、ここだったの」
「ああ。咲子、これ見て見ろよ」
「これって昔の宿帳?」
「そうだ。どんなに高い金を払っても買うことが出来ないこの宿の歴史だ」
「凄いわね」
「温泉はどうだった?」
「とってもいいお湯だったわ。それにずっと一人だったし」
「君もか?」
「亮ちゃんも?」
「俺もずっと一人だった。風呂の中でぼーっとしている顔を誰にも見られなくてよかったよ」
「亮ちゃんのぼーっとした顔見たかったな、ふふふ」
何だろう? 何かが変だ。だから私は咲子にこう訊ねた。
「あのさ、ちょっと訊きたいんだけど」
「何?」
「咲子は誰かに会った?」
「えっ? それどういう意味?」

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