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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
「お肉が柔らかくてとっても美味しいわ。こんなに美味しいぼたん鍋を食べたの初めてよ」
「ぼたん鍋を食べた記憶が俺にはない」
「亮ちゃん、初めて?」
「ああ」
「ぼたん鍋を食べることができないくらい市役所のお給料って安いの?」
「逆立ちしても遠山機械工業の給与には勝てない。でもどんなに給料が安くてもぼたん鍋くらい食べれるさ。ただ、俺は食通じゃない。朝はトーストにハムエッグ。昼は役所の食堂の蕎麦。夜なんてコンビニかどこかのスーパーの総菜で十分だ」
「何だか切なくなるんですけど」
「五十前の独り者なんてそんなもんだよ」
 おそらく独身者の多くは、私の意見に賛同してくれるはずだ(多分)。
「ビールも美味しいわ。冷えたビールに鍋って最高の取り合わせよね」
「それ、おっさんの台詞だな、ははは」
「失礼ね、亮ちゃんのバカ」
「バカで結構。……綺麗だな」
 私は咲子を見てそう言った。
「えっ?」
「綺麗だよ」
「私が?」
「もちろん。その紫色の浴衣も君に似合っている」
「私と結婚出来て亮ちゃんは幸せ?」
「当り前だ。というか奇跡だな。だから俺は街の広報誌に感謝する」
「ふふふ。ねぇ亮ちゃん」
「何?」
「さっきはごめんなさい」
「さっきっていつのこと?」
「さっきはさっきよ」
「何だよそれ?」
「私、亮ちゃんに言っちゃいけないことを言ってしまったわ」
「……」
 咲子が言う「言っちゃいけないこと」について考える。
「役所勤めの人に言っちゃいけないこと」
「ああ、あれか」
 小役人という咲子の言葉を思い出した。
「ごめんなさい」
「お相子だよ。君にそう言わせた俺だって悪い。だからお相子だ」
「許してくれる?」
「許すも許さないも、お相子なんだ」
「ありがとう」
「俺も悪かった。君が何をしようが君の自由だ。でも、できればあの格好は俺の前だけにしてほしい」
「ふふふ、わかったわ」
 温泉、そして宿の夕食。咲子と二人でいると警戒心のようなものが消える。私たちを自由自在に動かしている操手のことなどもうどうでもいい。
 旅が終われば選挙戦一色の生活が待っている。平穏でいられるのは今だけかもしれない。それを思えば、私と咲子をここに誘った誰かに(おそらく沢田絵里)に感謝すべきなのだ。
 二人の幸福な時間が一秒一秒ときを刻んでいく。私はこの時間が永遠であればと願った。
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