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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
「亮ちゃんの一番ダメなところは女心を理解できないところよ」
「この道、すずかけの道って言うんだって」
 私と咲子は夕食を済ませ、旅館の縁側に並んで座っている。
 咲子の機嫌が悪いのは、浴衣姿で外に出ることができなかったからだ。浴衣の上に半纏を羽織れば大丈夫と言った咲子を私と旅館の従業員が説得して止めさせた。今私と咲子は半纏の代わりにライトダウンを着ている。
「そういう風に誤魔化そうとするところが最悪。亮ちゃん、嫌われる政治家に突き進んでいるわよ」
「俺はまだ政治家じゃない」
「そうよね。今亮ちゃんは無職。でも万が一○○市の市長になれなかったら亮ちゃん、一生パパの奴隷よ」
「奴隷ね、ふん」
「何がふんよ。ああ、こんなに素敵なところなのに浴衣が着れないなんて」
「また来ればいいさ。七月か八月、どうだ?」
「それ政治家の公約みたいなもの?」
「君との約束だ」
「しょうがない、我慢するわ」
「洞川温泉は標高が八百mを超えることろにある。だから夏でも涼しい。なんでも関西の軽井沢と呼ばれているそうだ。でも冬の寒さは厳しい。もしかしたら来月雪が降るんじゃないか」
「奈良って暖かいって言うイメージがあったけど、こういうところもあるのね」
「雪の降る洞川温泉も悪くないと思うよ」
「そうね」
 旅館の軒先に吊るされている提灯に灯りが灯っている。一つ二つ、三つ四つ、それらの灯りは列を作ってすずかけの道を照らしていた。
「すずかけってさ、修験者たちが衣服の上に羽織る法衣のことを言うんだって」
「亮ちゃん、物知りね」
「君は宿のパンフレットを隅から隅まで読んだのか? 宿のパンフレットには創業五百年だけじゃなくて、すずかけにつていも書いてあったぞ」
「そうなの?」
「ああ。この幻想的な風景はこの道がなければ成立しない。修験者が修行に向かう道は、これ以上広くてもこれ以上狭くてもいけない。大昔、旅館の軒先に吊るしている提灯は一つだけだったんじゃないかな。小さくて弱い灯でも、温もりは修験者に心の深いところまで届いていたと思うよ。つまりそれくらい修行は厳しと言うことだ」
「ねぇ、亮ちゃん」
「何?」
「あの人を見て」
 咲子はそう言って道の先を指さした。
「……」
「寒くないのかしら」
「……」 
 紫色の色浴衣を着た女の後ろ姿が見えた。女は半纏を羽織ってはいなかった。
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