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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
 私と咲子は、妖の灯に導かれてすずかけの道を歩き出した。身を寄せて互いの体温を感じながら一歩一歩前に進む。妙にふわふわしていた。私と咲子が歩いているところだけ地球の力が及んでいなかった。もしかしたらそこだけ時間は止まっていたのかもしれない。いや、時間なんてそもそもないのだ。
 これは現実なのか? それとも私が勝手に作り上げた想像なのか? 私には判別がつかない。たとえ虚妄の世界を彷徨っていたとしても、私は咲子の温もりだけは信じる。
 私たちは紫色の浴衣を着た女の後をついていこうとしたが、女はいつの間にか消えていた、そもそも女なんていたのだろうか。ライトダウンを着ていても、洞川の冷たい空気が体の中に容赦なく入り込んでくる。浴衣で外を歩くなんて無謀だ。
 ならば私と咲子は幻を見たのか? 二人で同じ幻影の後を追っていたのか?
「ねえ、戻りましょ」
 咲子がそう言った。
「賛成だ。このままだと風邪をひく」
 咲子の提案に異論はなかった。
 急いで宿に戻る。ふわふわした感じはもうしない。それに時間はきちんと前に進んでいる(多分)。
 私と咲子は、二十四時間いつでも入ることが出来る風呂に直行した。かけ湯をして風呂に脚を入れる。湯の中にしゃがんでいき、肩まで湯に浸かる。その瞬間、私の体の奥に潜んでいた氷が溶けだした。
「最高だな」
 誰もいない風呂の中で私をそう声を出した。誰もいない……おそらく女湯も咲子一人だけだろう。満室だが、この宿には私たち以外の客はいない。
 沢田絵里はこの旅館の全室を予約した。だが実際に宿泊する客は私たちだけ。どうして沢田絵里はこの温泉を選んだのか。洞川という地に何か意味でもあるのだろうか。
 部屋に戻ると、先に風呂から上がった咲子がお気に入りの紫色の浴衣を着て窓の外を眺めていた。
「熊でもいたか?」
「ねぇ亮ちゃん、もう一泊できないかな」
 咲子は私の冗談には答えずにそう言った。
「無理だよ。会長が許さない」
「だったら言うけど、新婚旅行が一泊だけだなんてあり得ないわ」
「正確に言えば二泊だ。昨日大阪に」
「朝食のないビジネスホテルホテルって信じられないんですけど。私がパパに頼んでみる」
「おい、止してくれ」
「亮ちゃん、パパが怖いの?」
「怖い。街で一番の権力者だ」
「意気地なし」
「意気地なしで結構」
「バカ」
 そのとき、部屋の電話が鳴った。
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