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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
 誰かが幻燈機を回している。そして私は、宿の天井に映し出された映像を見ている。
 すずかけの道を照らしている提灯の灯がとても綺麗なのだが、私は少しだけ違和感を覚えた。  
 この風景を独り占めにしたくはない。私は咲子を呼んだ。
「おい見て見ろよ」
 そう何度も声を掛けたのだが、咲子から何の反応もなかった。咲子の方に顔を向けようとしたが、思うように首を曲げることが出来なかった。私は、自分の掌を見るために腕を上げよう試みた。だが私の意志は何かの力で遮られて、腕を動かすことができなかった。
 おいおい冗談じゃないぞ。ここで金縛り? 首は動かせないが、目だけは咲子に向けられるかもしれない。私は目を動かして隣で寝ている咲子を見た。見えた。咲子は私の方を向いてすやすや寝ている。
「おい、君も見て見ろ。すずかけの道が見えるぞ。提灯が列を作って灯っている。とても綺麗だ。見て見ろよ。おい、咲子」
 何度呼んでも咲子が起きることはなかった。
 後で「亮ちゃんだけずるい」って言われるんだろうと思った。そう言われたら、私は咲子にこう言う「何度も君を起こしたんだからな」と。
 仕方がない、私はもう一度目を天井に向けた。幻燈機はまだ動いていた。提灯の灯も、すずかけの道を浴衣姿で歩く人たちも見えた。
 子供も大人もいる。夫婦やカップルもそしてお年寄りも歩いている。それを見ているだけで私の心が和んだ。
 あれ? 何かが変だ。幻燈機が壊れている。提灯の灯には色がついている。その色は橙であったり黄金色であったり。でも浴衣に色がついていない。人間も白黒にしか見えない。「おい、壊れているぞ!」私は幻燈機を動かしている誰かに向かってそう言った。
 大声でそう叫んでも私の声は幻燈機を動かしている誰かには伝わらなかった。
 そしてもう一つ。すずかけの道を歩いている人たちはみな一つの方向に向かって歩いているのだ。だから誰もすれ違うことがない。誰かにぶつかることはないので喧嘩は起こらない。でも妙に感じるのだ。みんなが一つの方向にだけ向かって歩くなんて気分が悪い。仮にこれが映画のワンシーンだった監督は大馬鹿だ。
「おい、だめだ!そっちに行っちゃだめだ!」
 私は思わずそう叫んだ。私にはみんなの向かう先がわかった。そこは現界ではない他界だ。行ってしまったらもう二度とこの世に戻ることはできない。
「行くな!」
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