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千一夜
第49章 第七夜 訪問者 妖の灯
嫌な予感がした。
私の目に映っていたすずかけの道の様子がだんだん薄れて消えてしまった。提灯の灯も白黒だったが浴衣姿の人影も今はもう見えない。
幻燈機は役割を終えてしまったのかもしれない。ん? 幻燈機の役割って何だ?
そして予感は的中する。それが好ましくないものであればあるほど当たりの確率は高くなる。だったら目を瞑って眠ればいい。それが可能なら私はとっくにそうしている。多分、いや間違いなくあの女が現れる。あの女は私の頭の中に勝手に入り込む。
こうなるのであれば、たとえ違和感で心が震えても、すずかけの道の映像を見ていたかった。少なくとも提灯の灯には色がついていたし、白黒であっても道を歩く人たちの姿が見えた。
今私は天井をぼんやりと見つめている。天井に模様があって、それがくにゃくにゃ変形してあの女に変わることを私は待っている。
もう私にはすべてがわかる。だから早く私の前に現れろ。そう願いながら私は天井を見ている。
現れるぞ。そういう気配を感じた。あの女がまとっている香りがしたのだ。
「あっ!」
声は音にはならなかったはずだ。私の心臓はその瞬間だけ働くことを放棄した。規則正しく刻んでいた鼓動がそのとき止まった。
沢田絵里(あるいは立花京子かもしれない)が私の目にいきなり映ったのだ。白黒ではない。女の顔には色がついていた。そして女は笑っていた。おそらく私は驚いた顔をしたのだろう。それを見た女はまた大きく笑った。
「お前は誰だ? 沢田絵里なのか? それとも立花京子なのか?」
「……」
女は私の問いには答えずにまだ笑っている。
「おい、君は一体誰なんだ? 教えてくれ!」
私は叫んだ。
「……」
「おい……ちょっと待ってくれ……冗談じゃないぞ。お前何を着ているんだ? その浴衣は咲子のものだ!脱げ!今すぐ脱いで咲子に返せ!」
女が紫色の浴衣を着ているのが見えた。
「……」
「おい、聞いているのか!」
「咲子って誰よ? この女?」
女は私の隣で寝ている咲子をちらりと見てそう言った。
「そうだ。私の妻だ」
「亮ちゃんの妻は私でしょ?」
「ふざけるな! 俺は君なんか知らない。それに君から亮ちゃんと呼ばれる覚えはない!」
「私には覚えがあるんだけど」
「消えろ!咲子の浴衣を脱いで俺の前から消えろ!」
「ふふふ」
「何が可笑しい?」
「ふふふ」
私の目に映っていたすずかけの道の様子がだんだん薄れて消えてしまった。提灯の灯も白黒だったが浴衣姿の人影も今はもう見えない。
幻燈機は役割を終えてしまったのかもしれない。ん? 幻燈機の役割って何だ?
そして予感は的中する。それが好ましくないものであればあるほど当たりの確率は高くなる。だったら目を瞑って眠ればいい。それが可能なら私はとっくにそうしている。多分、いや間違いなくあの女が現れる。あの女は私の頭の中に勝手に入り込む。
こうなるのであれば、たとえ違和感で心が震えても、すずかけの道の映像を見ていたかった。少なくとも提灯の灯には色がついていたし、白黒であっても道を歩く人たちの姿が見えた。
今私は天井をぼんやりと見つめている。天井に模様があって、それがくにゃくにゃ変形してあの女に変わることを私は待っている。
もう私にはすべてがわかる。だから早く私の前に現れろ。そう願いながら私は天井を見ている。
現れるぞ。そういう気配を感じた。あの女がまとっている香りがしたのだ。
「あっ!」
声は音にはならなかったはずだ。私の心臓はその瞬間だけ働くことを放棄した。規則正しく刻んでいた鼓動がそのとき止まった。
沢田絵里(あるいは立花京子かもしれない)が私の目にいきなり映ったのだ。白黒ではない。女の顔には色がついていた。そして女は笑っていた。おそらく私は驚いた顔をしたのだろう。それを見た女はまた大きく笑った。
「お前は誰だ? 沢田絵里なのか? それとも立花京子なのか?」
「……」
女は私の問いには答えずにまだ笑っている。
「おい、君は一体誰なんだ? 教えてくれ!」
私は叫んだ。
「……」
「おい……ちょっと待ってくれ……冗談じゃないぞ。お前何を着ているんだ? その浴衣は咲子のものだ!脱げ!今すぐ脱いで咲子に返せ!」
女が紫色の浴衣を着ているのが見えた。
「……」
「おい、聞いているのか!」
「咲子って誰よ? この女?」
女は私の隣で寝ている咲子をちらりと見てそう言った。
「そうだ。私の妻だ」
「亮ちゃんの妻は私でしょ?」
「ふざけるな! 俺は君なんか知らない。それに君から亮ちゃんと呼ばれる覚えはない!」
「私には覚えがあるんだけど」
「消えろ!咲子の浴衣を脱いで俺の前から消えろ!」
「ふふふ」
「何が可笑しい?」
「ふふふ」

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