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千一夜
第6章 第二夜 パヴァーヌ ②

「あれ何?」
私は主人のデスクの上に並んでいるCDを指さして主人に訊ねた。主人が普段どんな音楽を聴いているか気になったからだ。
「どうぞ」
主人が並んでいるCDを三枚取り私に渡す。
「ビル……ビル・エ……、ねぇこの眼鏡を掛けたおっさん誰なの?」
「眼鏡を掛けたおっさん? ははは」
「何笑ってんのよばか健太」
「眼鏡を掛けたおっさんはビル・エヴァンスだ」
「ビル・エヴァンス? ピアノ弾いてんの?」
CDのジャケット写真には、ビル・エヴァンスがピアノを弾いている姿が写っていた。
「ああ」
「聴いていい?」
「もちろん」
主人は私の手からCDを一枚取ると、ケースからディスクを取りだしてそれをプレイヤーに挿入した。ピアノの音が聞こえてきた。大人の音楽だな、と私は思った。正直ジャズとかビル・エヴァンスの奏でるピアノがどれだけすばらしいのか、私にはわからなかった。
でも主人の嗜好が一つわかっただけでも、主人との距離が縮まったように感じることができた。
「そうだ、あの店ならいいかもしれない」
主人は急にそう言った。
「あの店って?」
「飛鳥ちゃんと勉強する店のことだよ」
「勉強は健太のこの部屋でいい」
「だめだ、それじゃ俺がロリコンに間違われる」
「健太、ロリコンじゃん」
「飛鳥ちゃんはどうしても俺をロリコンにしたいみたいだな」
「だから健太はもうロリコンなの」
「俺ってロリコンキャラなのか?」
「だから健太はもう立派なロリコン」
「立派なロリコンか、ははは」
「ばか健太。ふふふ」
久しぶりに私も笑った。
私はベッドから立ち上がり、ぎっしりとつまった本棚から適当に一冊を抜き取った。主人は私のそんな姿を黙って見ている。
「宇宙論」
私は本のタイトルをそのまま読んだ。
「……」
「こんな本読んで楽しいの?」
「読むというより勉強だな。楽しいというより面白い」
「私、東大生のそういうところが嫌い。自分て他の誰かと違うだろ、みたいなところが鼻に付く」
「鼻に付くか、ははは」
「そういう人を小馬鹿にしたところはもっと嫌い」
「そうか、勉強しないといけないな」
「ほら、そうしてまた人を馬鹿にするんだから、ばか健太はまじで東大生だね。最低最悪」
「俺は東大を代表しているわけじゃないよ」
「ばか健太は東大のキャプテンだよ」
「キャプテンか、ははは」
また二人で笑った。
私は主人のデスクの上に並んでいるCDを指さして主人に訊ねた。主人が普段どんな音楽を聴いているか気になったからだ。
「どうぞ」
主人が並んでいるCDを三枚取り私に渡す。
「ビル……ビル・エ……、ねぇこの眼鏡を掛けたおっさん誰なの?」
「眼鏡を掛けたおっさん? ははは」
「何笑ってんのよばか健太」
「眼鏡を掛けたおっさんはビル・エヴァンスだ」
「ビル・エヴァンス? ピアノ弾いてんの?」
CDのジャケット写真には、ビル・エヴァンスがピアノを弾いている姿が写っていた。
「ああ」
「聴いていい?」
「もちろん」
主人は私の手からCDを一枚取ると、ケースからディスクを取りだしてそれをプレイヤーに挿入した。ピアノの音が聞こえてきた。大人の音楽だな、と私は思った。正直ジャズとかビル・エヴァンスの奏でるピアノがどれだけすばらしいのか、私にはわからなかった。
でも主人の嗜好が一つわかっただけでも、主人との距離が縮まったように感じることができた。
「そうだ、あの店ならいいかもしれない」
主人は急にそう言った。
「あの店って?」
「飛鳥ちゃんと勉強する店のことだよ」
「勉強は健太のこの部屋でいい」
「だめだ、それじゃ俺がロリコンに間違われる」
「健太、ロリコンじゃん」
「飛鳥ちゃんはどうしても俺をロリコンにしたいみたいだな」
「だから健太はもうロリコンなの」
「俺ってロリコンキャラなのか?」
「だから健太はもう立派なロリコン」
「立派なロリコンか、ははは」
「ばか健太。ふふふ」
久しぶりに私も笑った。
私はベッドから立ち上がり、ぎっしりとつまった本棚から適当に一冊を抜き取った。主人は私のそんな姿を黙って見ている。
「宇宙論」
私は本のタイトルをそのまま読んだ。
「……」
「こんな本読んで楽しいの?」
「読むというより勉強だな。楽しいというより面白い」
「私、東大生のそういうところが嫌い。自分て他の誰かと違うだろ、みたいなところが鼻に付く」
「鼻に付くか、ははは」
「そういう人を小馬鹿にしたところはもっと嫌い」
「そうか、勉強しないといけないな」
「ほら、そうしてまた人を馬鹿にするんだから、ばか健太はまじで東大生だね。最低最悪」
「俺は東大を代表しているわけじゃないよ」
「ばか健太は東大のキャプテンだよ」
「キャプテンか、ははは」
また二人で笑った。

