この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第51章 第七夜 マスカレード
 部屋の中に静かに響く咲子の泣き声。いっそのこと咲子から詰られ罵倒された方がましだ。
 耳を塞ぎたくなるが、私は罰を受けなければならない。咲子の心の傷は生涯癒えることはない。咲子は私を許してくれない。
 どのくらい時間が経っただろうか。私は頭を下げ続け額を床に付けたまま咲子の泣き声を聞いていた。
「咲子、すまない。俺と一緒にいるのが嫌なら俺がこの部屋を出て行く」
 私は立ち上がった。そのとき……。
「卑怯者」
「えっ?」
「亮ちゃんは卑怯者よ」
「その通りだ。俺は卑怯者だ」
「バカ」
「俺はバカだよ」
「亮ちゃんは何もわかってないわ」
「わかっていない? 何を?」
「亮ちゃん、私たち夫婦なのよ。恋人じゃないの。夫婦は逃げちゃいけないの。どれだけ亮ちゃんに謝られても、私は亮ちゃんのことを許すことはできない。でも……だから逃げちゃダメなの。ねぇ亮ちゃん」
「何だ?」
「亮ちゃんは私のこと愛している?」
「もちろんだ。俺は咲子のことを愛している」
「だったら逃げないで。しっかり前を向いて、しっかり私を見て、私を幸せにして……お願い、亮ちゃん」
「誓うよ。俺は必ず咲子を幸せにする」
「ありがとう」
 咲子はそう言うと私に手を差し伸べた。
 私はずっと床の上で正座してた。私は立ち上がり、咲子の隣に座った。咲子を強く抱きしめる。咲子の香水の匂いが鼻孔を通った。
「いい匂いだ」
「亮ちゃん、もう少し気の利いた言葉をかけて欲しいわ」
「残念ながら俺にはそういう才能がない」
「それって才能の問題? ふふふ、でも亮ちゃんのそういうところがいい。妙に気取らなくて、だから出世なんかに縁がなくて、でもそんなことには亮ちゃん全然興味がなくて」
「あるさ」
「そうなの?」
「出世しないと給料が上がらない」
「ふふふ、バカ」
「バカで結構だ。俺は君と俺の街を愛している。絶対に君と街を裏切らない。もし俺の言葉に嘘があったら、俺は自分から地獄に落ちる。俺には覚悟がある」
 本心だ。そう言えば奈良でも私は誓った。
「ねぇ亮ちゃん、学生時代、辛いときとかどうしていた?」
「君も知っていると思うが、俺の学生時代なんて勉強とアルバイトだけで時間が過ぎていたよ。辛いと言うより苦しかったかな。あっ、そうだ、一つだけあるかな」
「一つだけ?」
「ああ」
「それは何?」
「音楽さ」
「音楽?」
「そう」
/655ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ