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千一夜
第51章 第七夜 マスカレード
「一度だけマスターと飲んだことがある」
「一度だけ?」
「そう、一度だけ。マスターって結構律儀な人だったんだ。『酒は二十を超えてから』それがマスターの口癖だった。ただね、俺が二十歳の誕生日を迎えても、マスターには店があるし、俺は俺で家庭教師のバイトもやってたから飲みに行く時間なんてなかったよ。『大学の勉強を疎かにしたら店を辞めてもらうよ』ともマスターから脅されていたからね」
「そうなの?」
「ああ、親にも見せたことのない大学の成績を毎年マスターに見せていたよ」
「マスターの反応は?」
「ご満悦さ。俺の成績を見ていつも笑っていた。あの頃の俺には勉強とバイトしかなかったからな。だから誰にも負けたくなかった。そういう気持ちになったのは大学に入ってからだな」
「じゃあ高校まではそうじゃなかったんだ?」
「小中高は努力しなくても一番になれたからな」
「そういう言い方直した方がいいと思うんだけど、めちゃくちゃむかつきます。だったらどうして亮ちゃん東大に行かなかったの?」
「高校一年の夏休みにある本を読んだんだ。それを書いた先生がK大の先生だった。その先生の授業が聴きたくてさ」
「そういう台詞一度でもいいから言ってみたかったわ。東大というブランドなんかより先生の方が大事だったんだ。それで、亮ちゃんはマスターとジントニックを飲みに行ったの?」
「ははは」
 思わず笑ってしまった。記憶が蘇る。走馬灯は私のためにゆっくり回転してくれた。
「何が可笑しいのよ」
「ごめんごめん、そりゃさ、俺だって期待したよ。ジントニックを飲みに洒落たバーにでも行くのかと思ってさ」
「違ったの?」
「行った先は新橋の焼き鳥屋。その焼き鳥屋安くてさ、確かひと串百円だったかな」
「ふふふ」
「だろ? 笑えるだろ? がっかりしたね。ジントニックが焼酎になったんだぜ」
「ふふふ」
「でもマスターともう一度飲みたかったな。ひと串百円の焼き鳥を肴にしてさ」
「いい曲ね」
 スマホに内蔵されているスピーカから“Piano Man”が流れている。
「亮ちゃん、泣いてばかりいるとマスターが悲しむわよ。亮ちゃんは○○市の市長になるの。泣き虫の市長じゃ市民を守れないわ。亮ちゃん、もう泣いちゃダメ。きっとマスターは天国でビリージョエルの“Piano Man”を聴いているわ。ジントニックを飲みながらね」
「そうだな」
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