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千一夜
第52章 第七夜 本当の顔
「グーグルマップよりこっちの方がわかりやすいと思うんで」
遠海舞はそう言ってメモ用紙を私に渡した。そこには遠海が書いた待ち合わせ場所までの地図が書いてあった。
無駄な情報を省いてポイントだけを記してある遠海の地図のお陰で、私たちは迷うことなく待ち合わせのカフェに着いた。
「十分くらいで着きますから」と遠海は言ったが、その十分を私たちは大幅に短縮した。残念ながら早く目的地に着いたところで誰も私たちを褒めたりしないのだが。
「この店だな」
「cafe秋田文庫。外観がカフェらしくないわね」
「そういうところ受けるのさ。入ろうか」
私と咲子はcafe秋田文庫に入った。店内を見渡すとほとんどの席が埋まっていた。
「いらっしゃいませ。お二人ですか? あちらにお席が空いております」
女性の店員はそう言ってカウンター席の方を指した。
「もう一人来るんだ。できればテーブル席にして欲しい。ここで待っていても構わないかな」
「それでしたら、少しお時間をください。すぐにお席を準備します」
店員はそういうと店の奥の方のテーブル席を片付けに行った。
「まだお昼休みが続いているみたいだな」
「それだけじゃないみたいよ。これを見て」
咲子はそう言ってスマホを私に見せた。
どうやらcafe秋田文庫には秋田市内からだけではなく、他県からもこの店を目当てに多くの観光客が来るようだ。
「なるほど、コーヒーと小説か、悪くない組み合わせだ。それにしても女の子が多いようだな」
「私はカフェだけでいいんだけど」
「東北には素晴らしい小説家がたくさんいる。青森は太宰治、岩手なら宮沢賢治。秋田は石川達三だな。石川の“蒼茫”は再読したい一冊だ」
「何だか頭が痛くなりそう」
「咲子は文学部だったんだろ?」
「大昔ね」
「何が大昔だよ」
「ねぇ、そんなことより遠海さんて女優のNMさんに似ていると思わない?」
「NMさんて誰?」
テレビを見ないわけではないが、私は最近の俳優の顔も名前も知らない。
「亮ちゃんに訊いた私がバカでした……」
「いい匂いがする」
店内にコーヒーの香りが漂っている。
「本当にいい匂いね。どんなお料理かしら」
咲子の鼻孔にはコーヒーの香りは届いていなかった。
「お待たせしました。お席のご用意ができました」
私と咲子はテーブル席に案内された。
遠海舞はそう言ってメモ用紙を私に渡した。そこには遠海が書いた待ち合わせ場所までの地図が書いてあった。
無駄な情報を省いてポイントだけを記してある遠海の地図のお陰で、私たちは迷うことなく待ち合わせのカフェに着いた。
「十分くらいで着きますから」と遠海は言ったが、その十分を私たちは大幅に短縮した。残念ながら早く目的地に着いたところで誰も私たちを褒めたりしないのだが。
「この店だな」
「cafe秋田文庫。外観がカフェらしくないわね」
「そういうところ受けるのさ。入ろうか」
私と咲子はcafe秋田文庫に入った。店内を見渡すとほとんどの席が埋まっていた。
「いらっしゃいませ。お二人ですか? あちらにお席が空いております」
女性の店員はそう言ってカウンター席の方を指した。
「もう一人来るんだ。できればテーブル席にして欲しい。ここで待っていても構わないかな」
「それでしたら、少しお時間をください。すぐにお席を準備します」
店員はそういうと店の奥の方のテーブル席を片付けに行った。
「まだお昼休みが続いているみたいだな」
「それだけじゃないみたいよ。これを見て」
咲子はそう言ってスマホを私に見せた。
どうやらcafe秋田文庫には秋田市内からだけではなく、他県からもこの店を目当てに多くの観光客が来るようだ。
「なるほど、コーヒーと小説か、悪くない組み合わせだ。それにしても女の子が多いようだな」
「私はカフェだけでいいんだけど」
「東北には素晴らしい小説家がたくさんいる。青森は太宰治、岩手なら宮沢賢治。秋田は石川達三だな。石川の“蒼茫”は再読したい一冊だ」
「何だか頭が痛くなりそう」
「咲子は文学部だったんだろ?」
「大昔ね」
「何が大昔だよ」
「ねぇ、そんなことより遠海さんて女優のNMさんに似ていると思わない?」
「NMさんて誰?」
テレビを見ないわけではないが、私は最近の俳優の顔も名前も知らない。
「亮ちゃんに訊いた私がバカでした……」
「いい匂いがする」
店内にコーヒーの香りが漂っている。
「本当にいい匂いね。どんなお料理かしら」
咲子の鼻孔にはコーヒーの香りは届いていなかった。
「お待たせしました。お席のご用意ができました」
私と咲子はテーブル席に案内された。

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