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千一夜
第52章 第七夜 本当の顔
 遠海舞が笑った。その笑いは意味深な笑いではなく、昔を懐かしむ笑いだった。笑顔の遠海が昔に戻った瞬間。
「どういうことでしょうか? 江村さんが中学二年生のときに何があったんですか?」
「文化祭で彼女、シンデレラのヒロインを演じたんです」
「江村さんは演劇部だったんですか?」
「いいえ。中学時代彼女はどの部活にも入っていませんでした」
「じゃあ何故彼女がヒロインを演じることになったんですか?」
「演劇部から頼まれたんですよ。何度も何度も頼まれて仕方なく都子ちゃんは引き受けたっていう感じですかね」
「ちょっといいかしら。中学生の演劇でシンデレラってちょっと……何て言うのかな、幼過ぎるんじゃないかしら」
 咲子がそう言った。
「私もそう思います。でもあの頃の中学の演劇部は全員が女子だったんですよ。だから極力女子だけでお芝居を完成させなければならなかったと思うんです。男の役を女子が演じるのに抵抗があったんじゃないでしょうか」
 理解できる。俳優を目指す女子がみんな宝塚音楽学校に入りたいわけではない。
「でも、あの物語の最後には王子様が出なけれならないですよね。王子役は誰が引き受けたんですか?」
 私は疑問を遠海にぶつけてみた。じゃんけんで負けた部員が、渋々王子役を演じたのだろうか。
「ふふふ」
 また遠海が笑った。
「……」
 まさか人形を出したとか……。
「都子ちゃん、演劇部の催し物に出るのに一つ条件を出したんです」
「条件? それはどういうことですか?」
「台本を書かせてくれと」
「台本?」
「都子ちゃんが書いた台本には王子は出ません」
「それっていいの? 勝手にストーリーを変えてもいいの?」
「グリム兄弟は中学生の書いた脚本を権利侵害だと言って訴えないよ」
 私は咲子にそう答えた。
 そんなことより中学二年生で脚本が書けることに私は驚いた。
「文化祭って文化部が一年で一番輝く日なんですよね。でも例年演劇部の劇には人気がなかった。舞台を見る人なんて部員の関係者だけ。だから一部の生徒の中には演劇部の出し物に体育館なんて必要ないと言い出す人もいたんです。ところが」
「ところが?」
 私は遠海の「ところが」の先が聞きたい。
「シンデレラの開演時間には体育館は満員になったんです」
「満員?」
「おそらく全校生徒全員が、都子ちゃんが書いて演じたその劇を見たと思います」
 
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