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千一夜
第52章 第七夜 本当の顔
「後にも先にも、都子ちゃんが輝いたのはあの中学二年生の文化祭のときだけ。その気になれば本当のシンデレラになれたのに、都子ちゃんはもう何もしようとしなかった。それどころか、自分から陽の当たる場所を避けていましたね。高校だって地元の進学校には行かずに私と同じ高校。都子ちゃんは勉強だってできたんですよ。美人で可愛くて、それでいて才能があって、でも華やかな世界には一切興味なし。不思議だったな、今でもそう思います」
 ばらばらだったパーツが集まってくるような気がした。それを組み立てれば江村都子の姿がわかるだろうか。
「高校ではどんな感じでしたか?」
 私は江村都子の高校時代が気になった。
「どんな感じも、中学のときと同じですよ。美人で可愛い都子ちゃんは男子生徒の目を独り占めにしてましたね」
「高校では演劇とかされてなかったんですか?」
 それでも私は訊ねる。江村都子の本当の顔を知るために。
「全然、都子ちゃんは文芸部に所属してました」
「文芸部?」
 私のアンテナに何かが引っかかった。
「推理小説のマニアだったな。文芸部は奇数月に部員の書いた作品を発表するんです。小説を書いたり詩を書いたり。都子ちゃんは読んだ小説の感想文のようなものを書いていました。今で言うとレビューになるんでしょか」
「レビュー?」
「都子ちゃんは演じるだけでなく、文章を書くのも得意でしたね。他の部員が書いた小説より、都子ちゃんの感想文の方が断然上でした。ただ」
「ただ? ただ、どうだったんですか?」
「そのすべては辛辣でした」
「辛辣?」
「Y.Aという作家が書いた小説のレビューは特に酷かったな」
 Y.Aはミステリー小説家だ。
「つまり江村さんは酷評したということですか?」
「ええ。この程度の動機で殺意を抱くなんてあり得ない。書き手は本当の悪人を知らない。雪の山荘を密室にしたのはいいが、どうやらこの作家は雪山を登ったことがないようだ。雪の降り方や積もり方で、犯人の移動時間にはずれがあるはずだ。作品はこのずれを無視して作家の都合で話を進めている。こんな感じですね」
「なるほど」
 驚いた。推理小説をただ楽しむのではなく、江村都子はその虚構の世界を現実とリンクさせて捉えている。
「ところが、一冊だけ都子ちゃんが激賞した本があります」
「激賞……」 
 江村都子は誰の書いた本に心を奪われたのだろうか。
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