この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
「長谷川がM会に顔を出したなんて想像できないな。やっぱりあれなのか、政治家になると人間が変わるのか? びっくりだわ」
「今俺は無職だ。まだ政治家じゃない」
「どうせ無投票なんだろ? まぁ、選挙になっても長谷川の後ろには遠山がついているんだ。選挙資金だって心配ないだろ? いいご身分だ。おい、来年のゼミのOB会は箱根だ。欠席するなよ」
「お前に俺の預金通帳を見せてやりたいよ」
「何だよそれ」
私は遠山機械工業から選挙資金の援助を受けていない。蓄えはほとんど消えた。選挙があろうがなかろうが政治家になるためには金が必要なのだ。
「一つお前に頼みがあるんだ」
「気持ち悪いな。学生時代、長谷川は俺たちに頼み事なんかしなかっただろ」
「お前らに負けたくなかっただけだ」
「今は負けてもいいのか?」
「もう少しで俺たちは五十を迎える。あの頃俺は尖っていたかもしれないが、今は丸くなったんだ」
「なるほどね。で、頼みって何だ?」
Y新聞編集局長後藤宋介は、大学時代私の数少ない友人の一人だ。
「調べて欲しいことがあるんだ」
「何を調べればいいんだ?」
「199×年5月1×日に何があったのか? それを調べて欲しい」
「はぁ? 長谷川、お前正気か?」
「お陰様で健康診断は良好だった」
「長谷川、俺は新聞屋だ。でもな、新聞屋でもできることとできないことがある。世界は広い。199×年5月1×日、世界中ではいろいろな出来事があっただろう。どこかで戦争があったかもしれない。東京の新宿では交通事故が二十件あったかもしれない。何が言いたいのか、健康診断が良好だった長谷川ならわかるよな? 199×年5月1×日は世界中でいろいろな出来事があったということだ」
後藤の言うことに間違いはない。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「俺が知りたいのは199×年5月1×日、秋田県で何があったのか? だけだ」
「秋田? 何で秋田なんだ?」
沢田絵里や江村都子のことを話せば長くなる。それに後藤には沢田や江村のことは知られたくない。
「だめか?」
「なぜ秋田なのかは言えないと言うわけだな」
「……」
後藤が無理と言えばもう手はない。
「テレビドラマみたいに一時間くれ、と言いたいところだが、一時間くらいでは無理だ。三日、三日くれ。俺が完璧に調べておく。199×年5月1日、秋田県で何があったのかを」
「頼む」
「今俺は無職だ。まだ政治家じゃない」
「どうせ無投票なんだろ? まぁ、選挙になっても長谷川の後ろには遠山がついているんだ。選挙資金だって心配ないだろ? いいご身分だ。おい、来年のゼミのOB会は箱根だ。欠席するなよ」
「お前に俺の預金通帳を見せてやりたいよ」
「何だよそれ」
私は遠山機械工業から選挙資金の援助を受けていない。蓄えはほとんど消えた。選挙があろうがなかろうが政治家になるためには金が必要なのだ。
「一つお前に頼みがあるんだ」
「気持ち悪いな。学生時代、長谷川は俺たちに頼み事なんかしなかっただろ」
「お前らに負けたくなかっただけだ」
「今は負けてもいいのか?」
「もう少しで俺たちは五十を迎える。あの頃俺は尖っていたかもしれないが、今は丸くなったんだ」
「なるほどね。で、頼みって何だ?」
Y新聞編集局長後藤宋介は、大学時代私の数少ない友人の一人だ。
「調べて欲しいことがあるんだ」
「何を調べればいいんだ?」
「199×年5月1×日に何があったのか? それを調べて欲しい」
「はぁ? 長谷川、お前正気か?」
「お陰様で健康診断は良好だった」
「長谷川、俺は新聞屋だ。でもな、新聞屋でもできることとできないことがある。世界は広い。199×年5月1×日、世界中ではいろいろな出来事があっただろう。どこかで戦争があったかもしれない。東京の新宿では交通事故が二十件あったかもしれない。何が言いたいのか、健康診断が良好だった長谷川ならわかるよな? 199×年5月1×日は世界中でいろいろな出来事があったということだ」
後藤の言うことに間違いはない。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「俺が知りたいのは199×年5月1×日、秋田県で何があったのか? だけだ」
「秋田? 何で秋田なんだ?」
沢田絵里や江村都子のことを話せば長くなる。それに後藤には沢田や江村のことは知られたくない。
「だめか?」
「なぜ秋田なのかは言えないと言うわけだな」
「……」
後藤が無理と言えばもう手はない。
「テレビドラマみたいに一時間くれ、と言いたいところだが、一時間くらいでは無理だ。三日、三日くれ。俺が完璧に調べておく。199×年5月1日、秋田県で何があったのかを」
「頼む」

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


