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千一夜
第7章 第二夜 パヴァーヌ ③

「エッチなとこ?」
私が関にそう訊ねる
「そうエッチなとこはダメだよ」
関はグラスを置くと、私に向けて両手の人差し指で×をつくった。
私と主人は外に出た。ほんの少しの風でも、頬に針がささるような冷たさだった。
「寒い」
主人はそう言うと、ブルーのダッフルコートを着ている私の体を強く抱いた。
「私、湯たんぽじゃないんですけど」
「十分だけ湯たんぽになって、だって飛鳥ちゃん温かいんだもん」
「無理、ていうかどうしてその赤のダウンぺらぺらなの?」
「大学一年のときに買った古着だから」
「新しいの買えばいいいじゃん」
「ぺらぺらでも気に入っているから」
「寒くても?」
「そう、寒くても気に入っている」
「私を湯たんぽ代わりにしても」
「それは申し訳ない」
「ばか健太」
「久しぶりに聞いたな、ばか健太。ははは」
「ねぇ健太。もう一ついいかな」
「何?」
「健太のマフラー臭いんですけど」
「臭かった? 今年はまだ洗ってないんだよね」
「最低最悪」
「最低最悪か。ははは」
「笑い事じゃないでしょ」
「ははは」
主人はずっと笑っていた。
師走の熱気のようなものを人々から感じる。忙しそうにしててもすれ違う人々はどこかウキウキしている。クリスマスそしてお正月。そこに向かう人々の気持ちは、抑えることができないくらいに自然と高ぶるのだろう。
これから向かう先は、私も初めて行く場所だ。本来高校一年生が行っていいところではない。私はそこをネットで調べた。
幸い主人は、寒い寒いというだけで、どこに行くのかは私に訊かなかった。私が我慢しなければならなかったのは、主人が首に巻いた匂い付きのマフラーだけだった。
行き先の看板が見えた。ホテルアーバン。
ホテルの前に二人で立つ。主人は上を向きホテルの外観を一通り確認した。
「ここってホテル? ビジホ……じゃないよな。シティホテルでもないし。まさかラブホ?いやラブホでもないな」
「カップルズホテル」
「カップルズホテルって何?」
「つまりラブホ」
「ラブホ!」
「大きな声出さないでよ、ばか健太」
幸い私たちの周りに人はいなかった。
「いやいやダメでしょ。ここ先輩が言うエッチなところだもん。ダメだよ」
「早川健太の名前でもう予約入れてるから」
「はぁ?」
「ばか健太、早く」
私は主人の手を引いた。主人は動かなかった。
私が関にそう訊ねる
「そうエッチなとこはダメだよ」
関はグラスを置くと、私に向けて両手の人差し指で×をつくった。
私と主人は外に出た。ほんの少しの風でも、頬に針がささるような冷たさだった。
「寒い」
主人はそう言うと、ブルーのダッフルコートを着ている私の体を強く抱いた。
「私、湯たんぽじゃないんですけど」
「十分だけ湯たんぽになって、だって飛鳥ちゃん温かいんだもん」
「無理、ていうかどうしてその赤のダウンぺらぺらなの?」
「大学一年のときに買った古着だから」
「新しいの買えばいいいじゃん」
「ぺらぺらでも気に入っているから」
「寒くても?」
「そう、寒くても気に入っている」
「私を湯たんぽ代わりにしても」
「それは申し訳ない」
「ばか健太」
「久しぶりに聞いたな、ばか健太。ははは」
「ねぇ健太。もう一ついいかな」
「何?」
「健太のマフラー臭いんですけど」
「臭かった? 今年はまだ洗ってないんだよね」
「最低最悪」
「最低最悪か。ははは」
「笑い事じゃないでしょ」
「ははは」
主人はずっと笑っていた。
師走の熱気のようなものを人々から感じる。忙しそうにしててもすれ違う人々はどこかウキウキしている。クリスマスそしてお正月。そこに向かう人々の気持ちは、抑えることができないくらいに自然と高ぶるのだろう。
これから向かう先は、私も初めて行く場所だ。本来高校一年生が行っていいところではない。私はそこをネットで調べた。
幸い主人は、寒い寒いというだけで、どこに行くのかは私に訊かなかった。私が我慢しなければならなかったのは、主人が首に巻いた匂い付きのマフラーだけだった。
行き先の看板が見えた。ホテルアーバン。
ホテルの前に二人で立つ。主人は上を向きホテルの外観を一通り確認した。
「ここってホテル? ビジホ……じゃないよな。シティホテルでもないし。まさかラブホ?いやラブホでもないな」
「カップルズホテル」
「カップルズホテルって何?」
「つまりラブホ」
「ラブホ!」
「大きな声出さないでよ、ばか健太」
幸い私たちの周りに人はいなかった。
「いやいやダメでしょ。ここ先輩が言うエッチなところだもん。ダメだよ」
「早川健太の名前でもう予約入れてるから」
「はぁ?」
「ばか健太、早く」
私は主人の手を引いた。主人は動かなかった。

