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千一夜
第7章 第二夜 パヴァーヌ ③
「……」
「それではどうぞごゆっくりお過ごしくださいませ」
 フロントの男は、主人の後ろに隠れる私にあえて目を寄越さなかった。
 私は主人の赤のダウンを引っ張りながら、アメニティバイキングを回った。その中から好きなものをバスケットに入れてエレベーターに向かった。ちなみに主人はバイキングコーナーからは何も取らなかった。
 四階、エレベーターの扉が開く。長い廊下を歩いてロイヤルタイプの部屋の前。ドアを開けて私と主人は部屋に入った。
 寝室? と言っていいのかわからないが、そこには天蓋付きのベッドが二つ(何で二つなの? 一つだけでいいのにとそのとき私は思った)。そしてベッドの足元の方にはソファセットが備えられていた。寝室のようなリビングのようなとても広い部屋だった。
 主人はダウンを脱いでソファに腰を下ろした。私はバスルームに向かった。カップルズホテルと言っても要はラブホだ。私はラブホの浴室が気になっていたのだ。
 ハートマーク型の赤いバスタブだった。五人家族が全員入れるような広いお風呂だった。ここに主人と二人で入る。胸がどきどきした。
 一通り部屋の中を見て回った。できれば主人と二人でそうしたかったが、主人はソファに深く座って目をつむっていた。テーブルの上には主人のショルダーバックが置かれていた。たかが小学生の二コマくらいで疲れている主人が許せなかった。
「健太体力ないんだね」
「体力の問題じゃない」
「じゃあ何の問題?」
「腹減った」
「はぁ? お腹が空いているの?」
「ルームサービスお願いします」
「私メイドじゃないんですけど」
「とにかくお願いします。腹減って死にそうです」
 主人は温泉卵とベーコンのカルボナーラとふわっとろチキンカレーにハイボール。私は海老とトマトクリームパスタ、そしてアイスティを頼んだ。
 主人は完食、私はパスタを半分以上残した。私が残したパスタも主人がぺろりと平らげた。
「ところで飛鳥ちゃん、今お父さんとお母さんは?」
 主人は二杯めのハイボールを飲んでいる。
「あの人たち今岐阜」
「岐阜って? どういうこと?」
「岐阜はお母さんの実家があるところ」
「なるほど」
 父と母は姉のことで母の実家に昨日から行っている。でも主人はなぜ私の両親が岐阜に向かった理由を訊かない。
「お姉ちゃんのことで」
 私は主人にそう教えた。
 
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