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千一夜
第7章 第二夜 パヴァーヌ ③
「ばか健太ばか健太ばか健太! 怒らないでよ、ばか健太!」
「飛鳥ちゃん、本当に悪かった。ごめん」
「……」
 悲しくて涙が出た。主人から怒られたこともあるが、そんなことはどうでもいい。私が悲しかったのは、主人の中にはまだ姉がいて、姉の存在が私なんかよりもはるかに大きいということだ。私は姉には勝てない。私は姉を追い越すことはできないのだ。
「飛鳥ちゃん、一つだけ教えてくれ。飛鳥ちゃんは葵が今どこにいるのか知っているのか?」
「……」
 答えなかった。
「お願いだ。今葵はどこにいるんだ?」
「教えてあげる。でもそれはエッチの後だから」
「飛鳥ちゃんは本当に葵がどこにいるのか知っているんだね?」
「……」
 私は頷いた。
 主人は目を瞑り腕を組んでいる。こんな主人を見たことは一度もない。主人はどんなときも冷静だった。
 私が中学の頃、いたずらでハーバード大学の数学の問題を解いてもらったことがある。万が一主人がその問題を解けなかったときには「東大生でも解けない問題があるんだ」という皮肉を用意していた。
 ところが主人はにんまりと笑うとその問題をわずかな時間で解いた。そして主人は私にこう言った。「ネットでこんな問題探す時間があるなら勉強しろ」と。
 どんなときも主人は自分を見失わない。
 沈黙が続く。音のない時間が長くなればなるほど、私は嫉妬し絶望した。主人は姉のことだけを考えている。そこに私が入り込む余地など全くない。だからこの静寂は私に痛みだけを運んだ。
 もうこんな取引なんて無駄だ。主人の中にいる姉の大きさが私は憎かった。
「飛鳥ちゃん、もう一度聞かせてくれ」
 主人は私を見てそう言った。
「何?」
「飛鳥ちゃんは本当に葵の居場所を知っているんだね?」
「知ってる」
「そうか」
「……」
 また静寂。
「飛鳥ちゃん、お風呂先に入れよ」
「うん」
 姉の代わりでもいい。私は主人の性欲を満たすだけの肉体になる。空しいけれど後悔はない。ただ私は姉の代わりになる自信がない。
 私は姉のように胸が大きくはない。おま×こにも毛が生えていない。主人はそのことを知っている。主人に抱かれることは、私が性的な部分でつまらない女だということを証明するようなものだ。
 今更私は巨乳になれないし、大人の陰毛を望むことは不可能のような気がする。でも私は主人に愛される……はずだ。
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