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千一夜
第8章 第二夜 パヴァーヌ ④
 私は主人からベッドに仰向けに寝かされた。私は目を瞑った。
 主人に体を拭かれ、全裸のままお姫様抱っこされて天蓋付きのベッドまで運ばれたのだ。優しい主人はここまで、私は獣に変身する主人に料理される。主人は天才シェフになるのか、それとも私の体を隅から隅まで食べつくす美食家になるのか、どちらでも構わない。私は今から主人と交わる。
 姉のことが気にならないわけではない。取引という汚い手段も使った。そうまでしても私は主人と結ばれたい。
 主人も私もずっと無言だ。主人からキスされることを私は待った。でも私の期待は裏切られた。私は主人からキスされなかった。
 主人は私の右の乳首を口の中に含んだ。容赦なく主人の舌が私の乳首を舐め回した。左側の乳首が主人の手で弄られる。くすぐったかった。でもくすぐったいという気持ちが徐々に快感に変化していく。
「飛鳥ちゃんの乳首バラの匂いがするよ」
「飛鳥ちゃんなんて呼ばないで。ちゃんはいらないから、飛鳥と呼んで」
「わかったよ」
 私は怖かった。姉に比べて私の胸は小さい。胸が小さいとなぜか乳首も小さい。それを姉と比べられることが私には耐えられない。
 例えば主人が、姉と私の体を比べるような言葉を使ったら私は絶望する。悲しくなって私は、主人に抱かれながら泣くかもしれない。だから私は必死に願った。どうか主人が姉のことを言いませんように、と。
 でも主人は紳士だった。私の体を愉しんでいる間、主人は一言も姉のことを言わなかった。
 主人の舌が、私の乳首だけでなく面積の狭い乳輪も舐め回していることがわかる。厭らしくスムーズに動いている主人の舌に私は何か褒美を与えたくなった。
「健太、気持ちいいよ」
「ふん」
「何がふんよ、ばか健太」
「可愛いよ、飛鳥」
 初めて主人に呼び捨てにされた。そして主人の口が私の口と重なった。
 最初にそうしてくれればいいのに、と思ったが、主人が私を呼び捨てにしてくれたことで許すことにした。
 主人の舌が私の口の中に入ってきた。私は敢えて何もしなかった。私の口の中を主人に征服してもらいたかった。キスしながら主人の手(右手)が私の乳首を弄り始める。
 オナニーで乳首を弄ることもあったが、主人の手には勝てない。気持ちよさが全然違った。体の力がどんどん抜けていく。緊張感なんてもうどこかに行ってしまっている。

 
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