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千一夜
第8章 第二夜 パヴァーヌ ④
 主人が手首をつかんで私の両腕を持ち上げる。私の腕はシーツの上をゆっくりと這って行った。主人は私の手首を放してくれない。私は主人から自由を奪われる。すると主人が私の左の脇の下に顔を埋めてきた。主人の舌が脇の下をチョロチョロと舐める。くすぐったかった。
「くすぐったい」
 思わず言葉が漏れた。
「飛鳥の匂いがする」
 どうやら私の脇の下の匂いは、バラの匂いではないようだ。
 主人は私の両方の脇の下を交互に舐めた。最初くすぐったかったのに、主人の舌が脇の下をペロリと舐めるとそれはまた快感に変わっていった。
 主人の舌が私の小さな乳首に戻ってきた。舌の裏も使って舐めてくれる。主人の上の歯と下の歯で乳首が挟まれ、舌先でつんつん乳首を刺激されたときは自分自身おかしくなりそうだった。
「気持ちいい、すごく気持ちいい」
 心の声がすぐに言葉になった。もっと体を舐めてほしい。お腹も背中も、そしてあそこも、私がいくまで舐めてほしい。
 そんなことを願う必要なんてなかった。主人の舌は胸からお腹にやってくる。私の手首が解放されたかと思ったら、主人の手は私の小さな胸を揉み始めた。その流れがとてもスムーズで、私は本当に主人から料理されているのではないかを思った。
 気持ちよくなるために何度もオナニーをした。でも気持ちよさのレベルが全然違う。今私は主人の舌だけで十分満たされている。そして主人の舌は間違いなく私のあそこにやってくる。早く来て、早く私のおま×こに来て、と心の中で祈った。
 ところが主人は私の体をうつ伏せにしたのだ。そして背中を舐め始めた。メインはまだまだ先のようだ。
 主人の舌が背中を這っている。もちろん気持ちがいい。でも私をドキリとさせる言葉を主人は言った。
 主人の舌が私のうなじを舐め始めた。そして私の耳元ではっきりこう言ったのだ。
「ガキ」
 聞き間違いなどない。主人は私をガキと呼んだのだ。
 冷たく言い放たれたガキという主人の声が、私の中で繰り返される。
 主人からガキと言われてもなぜか怒りなど沸かない。もちろんガキという言葉を歓迎はしないが、とても不思議な気分になった。
 主人が言う通り、私はまだ大人になり切れていないガキだ。でも私は主人にこう言ってやりたかった。そんなガキを今あなたは愉しんでいると。
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