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千一夜
第9章 第二夜 パヴァーヌ ⑤

このときすでに私には嫌な予感がしていた。姉は私の手を引きながらその小屋の周りを歩き始めた。木でできた小屋。その小さな小屋が私には不気味に見えた。だから私は姉にこう頼んだのだ。
「帰ろうよ」
「……」
姉は私の言葉を無視して小屋の様子を探っている。
「早く帰ろうよ」
「……」
姉は私の言葉をまた無視……しなかった。
「あっちゃん、この中に入ってみようか」
「いやだ!早くおうちに帰りたい!」
私は姉の手を強く引いてそう頼んだ。
「お姉ちゃんと一緒だから大丈夫。ちゃんと手をつないでるから」
「いやだ!帰りたい!」
気味の悪い小屋の中に入るなんて冗談じゃない。でも姉は諦めなかった。姉は私の前においしい餌をぶら下げたのだ。
「あっちゃんが私と一緒にこの中に入っったら、もう一度ブランコに乗ろうよ。お姉ちゃんがまたあっちゃんの背中をまた押すから。どう?」
「……」
断ればよかったのだ。でもついさっきブランコに乗った楽しい記憶が、私の判断を狂わせた(小学二年の女の子に判断というものがあればの話だが)。それに小屋には私一人が入るのではない、姉と一緒だ。
「あっちゃん、いいでしょ?」
「どうしようかな」
迷ってはいけなかったのだ。
「一緒に小屋の中に入ってみようよ。お姉ちゃんが一緒なんだよ」
「うん、わかった」
そう言って私は姉の顔を見た。姉は笑っていた。ただそれは顔が妙に歪んだおかしな笑い方だった。そして私の手を握っている姉の手に力が入った。
逃がしてなるものか、という姉の強い意志を私は感じた。
姉は私の手を引いて小屋の入り口の前に立った。姉がゆっくり小屋の戸を引いた。小屋の中は真っ暗だった。そのときだった。私の体が宙に浮いた。どうして宙に浮いているのかすぐにわかった。私は姉から後ろから抱えられ、そして持ち上げられたのだ。
どうなっているのだろうか? なぜ姉はこの小屋に入るために私を持ち上げたのだろうか? 頭の中がパニック状態? いや違う。私の頭の中は真っ白の状態だ。
驚き、戸惑い、そして不安。そういった感情が私を一気に包んだ。私はその間声を出せなかった。
そのときだった。私の背後から笑い声が聞こえた。それは薄気味悪い笑いだった。男の笑い声でもない、女の笑い声でもない。奇妙な動物の笑い声のような気がした。
「帰ろうよ」
「……」
姉は私の言葉を無視して小屋の様子を探っている。
「早く帰ろうよ」
「……」
姉は私の言葉をまた無視……しなかった。
「あっちゃん、この中に入ってみようか」
「いやだ!早くおうちに帰りたい!」
私は姉の手を強く引いてそう頼んだ。
「お姉ちゃんと一緒だから大丈夫。ちゃんと手をつないでるから」
「いやだ!帰りたい!」
気味の悪い小屋の中に入るなんて冗談じゃない。でも姉は諦めなかった。姉は私の前においしい餌をぶら下げたのだ。
「あっちゃんが私と一緒にこの中に入っったら、もう一度ブランコに乗ろうよ。お姉ちゃんがまたあっちゃんの背中をまた押すから。どう?」
「……」
断ればよかったのだ。でもついさっきブランコに乗った楽しい記憶が、私の判断を狂わせた(小学二年の女の子に判断というものがあればの話だが)。それに小屋には私一人が入るのではない、姉と一緒だ。
「あっちゃん、いいでしょ?」
「どうしようかな」
迷ってはいけなかったのだ。
「一緒に小屋の中に入ってみようよ。お姉ちゃんが一緒なんだよ」
「うん、わかった」
そう言って私は姉の顔を見た。姉は笑っていた。ただそれは顔が妙に歪んだおかしな笑い方だった。そして私の手を握っている姉の手に力が入った。
逃がしてなるものか、という姉の強い意志を私は感じた。
姉は私の手を引いて小屋の入り口の前に立った。姉がゆっくり小屋の戸を引いた。小屋の中は真っ暗だった。そのときだった。私の体が宙に浮いた。どうして宙に浮いているのかすぐにわかった。私は姉から後ろから抱えられ、そして持ち上げられたのだ。
どうなっているのだろうか? なぜ姉はこの小屋に入るために私を持ち上げたのだろうか? 頭の中がパニック状態? いや違う。私の頭の中は真っ白の状態だ。
驚き、戸惑い、そして不安。そういった感情が私を一気に包んだ。私はその間声を出せなかった。
そのときだった。私の背後から笑い声が聞こえた。それは薄気味悪い笑いだった。男の笑い声でもない、女の笑い声でもない。奇妙な動物の笑い声のような気がした。

