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第8章 　啓子

「　ご両親は？　」
啓子が聞くと　前方を見たまま　

「　お袋は　元気ですよ・・・　
　こんな仕事をして居るんで　
　良い顔してくれませんけどね　」

「　お父さんは？　」

「　親父ですか？俺が高校1年の時　叩き出しました
　　お袋に暴力振るい続けていて　我慢できなくて
　　あの頃、お袋が働いていて　親父酒ばっかり飲んで
　　あの日も酔った親父が　酒が無いとお袋に言って
　　お袋が金が無いと言ったら　親父がお袋を
　　殴っているのを見て　親父の腕を掴んだら
　　俺を殴ってきて　酒飲んで細い体で殴って来ても
　　大して痛くないんですよね　今までは怖かったのが
　　あの時、頬　殴られたので　なんか取り払われて
　　親父を思いっきり殴ってましたね　親父鼻血出して
　　怯えた顔で見て来るから　襟首掴んで玄関から
　　放り出して親父の服を纏めて　投げつけて
　　出ていけ　二度と帰って来るなって　玄関閉めて
　　お袋見たら　部屋の隅に座ってましたよ
　　お袋に　高校辞めて働くからって言ったら
　　高校だけは出て欲しいと言われましたけど
　　次の日学校に行って　退学すると言って　
　　まあ体が、でかかったから　現場作業の仕事に
　　お袋に苦労させたくなくて　中卒だと仕事無いですからね
おばさん！！　」
猛の口調が変わった

「　家に帰らないと聞きましたけど　どうするんです？　」
時折啓子を見て来る猛に啓子は無言に成った

「　おばさんは　俺にとって　お袋なんですよ　小学生の時
　　親父が酒ばかり飲んで　家に帰りたくなかったんです
　　帰ると親父に殴られる事が多くて　嫌だったんですよ
　　おばさん　潤と分け隔てなく接してくれて　
　　あの頃は　潤が羨ましかったな　」
懐かしそうに話して来る

「　今から行く温泉　お袋の実家の傍なんです　小学生の頃
　　夏休みに何度か遊びに来て　仲良くなった奴が　
　　支配人している旅館なんです　今日一日　ゆっくりしましょう　」
何時の間にか高速を降り　田舎道を走り始め車は　細い坂道を
登り始め　急に視界が開け目の前の駐車場に車を止め　猛は
エンジンを切ると

「　着きました　」
啓子を見て　ドアを開けて降りると　トランクから啓子の
キャリーを降ろした