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第8章  啓子
「 おばさん! おばさん!! 」
猛に二度も声を掛けられて 我に返り
猛を見ると 

「 この宿 どうです? 」
猛の目を見て 首を傾げて

「 素敵な宿ね 」
猛が宿の造りをを聞いて来るのでは
無い事は 判るが猛が何を聞きたいのか
判らず 啓子は当たり障りのない返事を返した

「 此処で 働きませんか? 」
啓子は目を丸くして猛を見た

「 昨日の朝 誠に電話して話していたんです
  誠が 昨日言いかけたでしょう それで
  昨日俺も この宿の手伝いをして おばさんに
  この宿が どんな処か知って貰いたくて
  どうです? 」

猛の話を聞いている時、隣の夫婦が立ち上がり 
ご主人が啓子に軽く頭を下げ
夫人はご主人の腕に腕を絡ませて出ていく後姿を
見ながら 啓子は口を噤んで考え込んだ
食堂から誠が 作務衣を脱ぎ白いワイシャツで
猛の隣に座り 笑顔を向けて

「 お早う御座います 昨日の晩は・・・ 」
苦笑いを浮かべ 頭を下げ 

「 日下さん 働いて頂けますか お部屋は
  この村 空き家が多いので 直ぐにご用意
  出来ます 日下さんに働いて頂けると
  私も色々助かる事が多いので お願いします 」
頭を下げた姿に啓子は頷いた 
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