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第9章 第9章 房江・真紀
妻を亡くして5年 先代からの付き合いの宿を
時折一人で訪れ 仕事の疲れを解し 亡き妻と
過ごした部屋で思い出に浸り
このまま独身で終わると思っていた 

ある日 働く姿の啓子の姿を見て 
そこに亡き妻の面影を見て
老いらくの恋なのか 啓子に惚れて声を掛け
嫁に来てくれと 何度も頼んだが首を振られ
住む処も仕事も無い 啓子を受入れて呉れた
誠に恩が有るからと
頑なに断られ 誠に無理に頼み込み
宿泊をする日だけの逢瀬が続いていた

白い肌が明かりの下で 息を整えようとして
孝明は頭の下に手を差し込み 大柄な啓子の
頭が孝明の胸の上に 啓子の手の平が胸に当てられ
大きく息を吐きだした時

「 啓子さん 家の若い社員の筆おろしを頼めないかな? 」
啓子は胸の上の顏を外して 起き上り孝明を見下ろした
孝明が啓子を引き 頭を腕に乗せ見つめて

「 頼めないかな? 」
再度 頼み込んで来た

「 社長さん 平気なんですか? 私が他の人と・・・ 」
腕に乗せた顔で 目を合わせ聞く

「 自分が楽しんで 連れ合いが自分だけと言うのは
  可笑しくないかな? 死んだ女房も 私の友人と
  抱き合った事が 友人夫婦と夫婦交換もしたな 」
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