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12歳年下の彼に看病される話
第4章 巴の引っ越し

「そのキスが…ダメなんです…」

『そう言って、ダメって言ってる
巴さんの顔の方が、ダメですけどね。
そんな、可愛い困った顔して。
ダメって言われても、僕が喜ぶだけですから』

「き…キスは、…ご飯が済んでから……ッ」

『ご飯が済んでからですね?
じゃあ、それまでいい子にしてますよ』

いい子にしてると…言ったはずの彼に、
新居のキッチンでお蕎麦を茹でようと
お鍋に入れたお湯が沸騰するのを
待っている今も…後ろから
ぴったりと寄り添って居て。

巴の項の唇を寄せて来て、すぅうっと
その辺りの匂いを嗅がれている
気配を感じる。それに…その辺りを
彼の吐く息がくすぐって来て
どうにも…くすぐったくて身じろいだ。

「ちょ…、あの…ッ。
港斗君、お料理の…邪魔です…」

『だって…巴さんが…、忙しそうで
僕に構ってくれないから…寂しくて。
それに、僕は…ちゃんといい子に
巴さんとの約束…守ってますよ?』

普通にするよりも…時間が掛かったのは
彼に後ろから身体を寄せられている所為で。
あんな風に甘えて来られたら、
強くダメとも言えなくて…ついつい
彼を身体に引っ付けたままだったから。

フローリングのLDKは13畳あるから。
床の上のテレビは丁度いいサイズ感だ。

部屋の中央に敷いたセンターラグの上に
家で使っていた80×60センチの
コタツをテーブルとして置いただけだが。

ふたりでご飯を食べたりするには
ちょっと小さい様な気もするな…。

『このテーブルでも使えそうな、
ローソファか、2人掛けの
座椅子でも…買いましょうか。
折角これだけのリビングがあるのに。
一緒にゆっくり寛げる場所が欲しいですもんね』

彼の分はスーパーで別に買い足した蕎麦を
1玉足した、2倍…大盛りの
エビ天とかきあげとお揚げの乗った
豪華な特製引っ越し蕎麦が完成して。

それを一緒に小さいテーブルを
挟んで向い合せで食べて。
デザートにって買ったプリンも頂いた。

その後は…、床に置いたテレビを観ながら。
身体を預ける場所がないので
壁に並んでもたれ掛って居たから。

確かに…ご飯食べるだけの時間なら
ラグとテーブルだけで良いけど。
こんな風に寛ぐなら、やっぱり…
ソファか…座椅子があった方が良いなって。

そんな事を巴が考えていると。

『巴さん…約束、忘れて無いですよね?』

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