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~疼き~
第2章 追憶
するとマスターは満面の笑みを浮かべながらオーダーを確認する。
「レバーにハツにシロね。じゃ、直ぐに焼くから待っててね…」
「うん、お願いします」
マスターは炭火のある焼き場に移動して焼き鳥を焼き始めた。
店には焼き鳥のいい香りとそれを焼く煙がカウンターにも漂ってきた。
焼きあがるとそれを皿に盛りその女のカウンターへと置いた。
「はい、お待ち」
「マスター、ありがとう、頂くね…」
そう言うとその女は焼き鳥を実に旨そうに食べ始めた。
蒼はこの店の店主であるマスターととても親しかった。
何しろ、毎週末になると足繫く通っているのだ。
嫌でもマスターと顔馴染みになる。
蒼は暫く、マスターと話をしていた。
「マスター、今日は、まだそんなに店混んでないんだな?」
マスターと呼ばれる男はちょっと小柄で歳の頃は60歳ちょっとに見えた。
顎には立派な顎髭を生やしていた。
「そうだな、まだ今日はそんなに混んでないな。これから混んでくるだろう」
マスターはそう話すと暑いのか団扇でパタパタと身体を仰いだ。
蒼はそのマスターの姿を見て、またチラリと女の方に目をやった。
女もそれに気づく。
蒼はこの女とは、以前にも何度かこの店で顔を合わせていた。
だが、話はしたことはなかった。