この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~疼き~
第2章 追憶
今日こそは話しかけようと思っていた。
まだ、店には客は蒼とその女しか居なかったのだ。
今が、チャンスだと思っていた。
「ねぇ、そこのお姉さんさぁ、いつも見るけどどこから来てるの?近所?」
蒼はカウンターの奥の端っこに座っている女にそう声をかけた。
女はビックリしている様だった。
だが、蒼の顔を見ると嬉しそうに笑って見せる。
「うん、近所よ。あなたはどこから来てるの?」
「え?俺か?俺も近所だよ」
「あら、偶然ねぇ…」
「そうだな…」
そう言うと二人はおかしそうに笑うのだ。
「そっちの隣のカウンター席に行ってもいいかな?」
蒼は勇気を振り絞ってそう話した。
「うん、いいよ。一緒に飲まない?」
「俺も、そう思ってた…」
蒼はホッピーを持ちその女の席の隣へと移動した。
つまみの焼き鳥はマスターが運んでくれる。
「俺、岩崎蒼っていうんだ」
「あら、私は白石夏海よ…」
「夏海って名前なんだ?夏が誕生日なのか?」
「ええ、7月が誕生日だよ」