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~疼き~
第3章 前日の事
一人きりになると、何だか心にポッカリと穴が開いた様な感覚を覚えた。
そして、一人取り残された夏海は蒼が亡くなる前日の事を思い出していた。
そう、あれは蒼の健康診断の結果を見ている時だったのだ。
蒼は6畳の白いソファーが置いてある部屋でテレビゲームをしながら酒を飲んでいた。
夏海はゲームには殆ど興味がなかった。
ただ、昔、少しだけ蒼と一緒に格闘技ゲームにハマり二人でいつも夜になるとやっていたのを覚えている。
それ以降、ゲームをしたことがなかった。
何故、そんなにもゲームにのめり込むのかと、不思議に思っていたのだ。
この日も蒼はロールプレイングゲームをしながら酒を飲んでいる様だった。
ゲームをしているその前にはテーブルが置かれている。
そのテーブルの上に、先日行った蒼の健康診断の結果が書かれてある用紙が置いてあった。
夏海はソファーに座りその結果票を見ていた。
肝臓の値が非常に高かったのだ。
「蒼、γGTPが1000もあるって尋常じゃないよ…」
「うん、分かってるよ…」
蒼はゲームをしながら、その傍らで酒の入ったグラスを手に取り飲み始める。
「蒼、私の言ってること聞いてる?」
夏海はちょっと怒ったようにそう言った。
だが、蒼はそんな事は関係ないと言う顔でゲームを続けている。
そのゲームに夢中になればなる程、酒も進むのだった。
毎晩、蒼は焼酎の水割りをタンブラーグラスに7から8杯近くは飲んでいた。