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~疼き~
第10章 初対面
「まだ、その人の事を忘れられないんだろ?」
夏海は自分の心の中を見透かされたように感じてハッとした。
確かに蒼の事は忘れる事は出来なかった。
でも、前に進まなくてはいけないとも思っていたのだ。
「確かに、忘れることはできないと思う。でも、もうそろそろ前に進まないといけないと思うんだ…」
二人の間に沈黙が流れていた。
その沈黙を破って話し始めたのは蓮だった。
「その人の事を忘れることはないよ。夏海にとっては大切な人だったんだろ?俺も、その人の事を忘れることはないよ。でも、夏海が言う通り、前に進まないとな…」
夏海は蓮の顔を見つめながら話を続けた。
「そうなんだ、前に進まなくちゃいけないの。蓮となら前に進める様な気がするの…」
蓮はそれを聞くと嬉しそうに笑った。
「そう言ってくれると俺も嬉しいよ…前の彼氏の話とか聞かせてくれよな」
「うん、ありがとう。蓮…」
「俺は、夏海の過去も含めて全て好きなんだ。だから夏海の過去も受け止めるさ…」
「ありがとう、蓮…」
夏海は、蒼との過去を否定されたらどうしようかと思っていたのだ。
確かに、過去蒼と一緒に生活していたのは事実だった。
その事も受け容れて、受け止めてくれる人を夏海は求めていた。
蓮は、それをしてくれたのだ。
夏海は益々、蓮の事が好きになってゆくのを感じていた。