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青い欲情~男と女の色模様~
第8章 親父と沙織の関係
「部長?」
部長に後ろから抱きしめられていると気付いて、沙織は、自分でも分かるくらい体温が上がる。
「本当に、君って人は…なんて可愛いんだ」
こらえるような声で、春彦はそう言った。
胸に回された腕はぎゅっと沙織を捉え、
後頭部に春彦の吐息を感じた。
確かに部長のことは好きだけど、
男として意識したこともなかった。
それでも彼にこんなことされるだなんて、
思ってもいなくて、想像よりも男らしい体に抱きしめられた沙織の心臓はドキドキと早鐘を打った。
「っあ!」
後頭部に感じていた部長の吐息が、
ふいに首筋へと降りてきた。
素肌に触れる吐息に、ぞくぞくしている自分を恥ずかしく思っていると、
落ちてきた唇の感触と、ちくりと伸びかけた髭の痛みに声が漏れた。
「んっ、部長…ああっ!
いや~ん…春彦さん…」
首筋に軽い口づけを何度も落とされて、
思わず春彦の名前を呼んでしまった。
耳たぶをぺろりと舐め上げられ
一層高い声を漏らした沙織の身体を、
春彦の腕がいやらしく這ってきた。
「はぁ、あの、落ち着いてください」
胸元に近づいた春彦の手を掴んで、
何とか抵抗を試みる。
彼が後ろにいるせいで
表情が見えないことが、私の心を不安にさせた。
「落ち着いていられると思うんですか?
こんなにいい匂いをさせておきながら…」
「え…?」
静かな春彦さんの声と台詞が不安を煽って、
沙織は思わず後ろを振り向いた。
至近距離で目に入った彼の表情は、
今までに見たことのないものだった。
色欲まみれの瞳…
それからほんの少しのジレンマ。
いつもは仕事に集中して
沙織への言葉は、おざなりの誉め言葉や
他愛ない叱責だけを語るその顔が、
今では目の前の獲物を見定める雄の顔をしていた。