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青い欲情~男と女の色模様~
第12章 美波の母 明江

「いらっしゃいませ
お好きなお席にどうぞ」

磯田は窓際の景色の良いテーブルを選ぼうとしたが、明江は男性と二人ということを意識して
人目につかない奥のテーブルをチョイスした。

「窓際の方がおしゃれですよ?」

「いえ…どこの誰に見られるかわからないですから目立たない席の方がいいんです」

二人を訳ありカップルと思ったのか
ウェイトレスさえも「ご注文はお決まりでしょうか?」と囁くように問いかけてきた。
「当店は6時からバーとしても営業いたしますのでアルコール類もございますが…」そう言ってテーブルの上のメニュー表とは別に小脇に抱えて持ってきた夜メニューを差し出した。

「あら?ワインもあるのね」

明江はワインに目がないようで
メニュー表を楽しそうに眺めた。

「ワインがお好きならどうぞ飲んでください。
僕も付き合いますよ」

「まあ!本当に?
うちは主人が下戸なので家ではほとんど飲まないの。
冠婚葬祭の時ぐらいなのよ」

「じゃあ、久々に飲みましょう!」

磯田は高価でもなく安価でもないお店がお薦めするワインをボトルで注文した。

「おつまみはと…チーズなんかどうです?」

「いいわね!じゃあ、このチーズとクラッカーを頼んでもいいかしら?」

ワイン好きという共通の趣味で
二人はすっかりと打ち解けあった。

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