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青い欲情~男と女の色模様~
第14章 それぞれのクリスマス
妻の清美がヨガ教室のインストラクターと不倫しているとも知らないで、夫の晴彦は会社の忘年会で沙織を意識しながら酒を呑んでいた。
愛人の沙織とはテーブルが離れていたが
他の社員に気づかれないように
互いにアイコンタクトを取り合って
忘年会がお開きになった二次会は二人だけでエスケープする事を堪忍しあった。
「え~、宴もたけなわではございますが
お時間がやってまいりました」
お決まりのセリフで幹事役の男が宴会を〆始める。
「いよ!いいぞ幹事!次、行ってみようかぁ~!」
泥酔し始めた社員がヤジを飛ばす
それを受けて幹事の男は、まあまあ抑えてと
手のひらを下に向けて落ち着いてくださいというジェスチャーで応える。
「部長、このあとカラオケルームを押さえてあります」
幹事の男は、わざとらしく二次会に晴彦を招待するかのような口振りで囁いてくる。
『ほら来た…』
どうせ、上司など二次会に来て欲しくもないくせに、とりあえずのポーズで誘ってくる。
狙いは晴彦の財布だと思いながら
仕方なく懐から財布を抜き出して、一万円札を数枚抜き取って幹事に渡した。
「私は呑みすぎてしまったようなので、これで帰らせてもらうけど、皆はこれで楽しんできなさい」
いえいえ、そんな気を使っていただかなくてもと
毎年恒例の会話が繰り広げられた。
申し訳なさそうなポーズをしながら
差し出した数枚の一万円札を幹事はスッと受け取ると「皆さん!部長からカンパをいただきました~!」とこれまた毎年恒例のセリフで宴が終わる。
「部長!ありがとうございます!」
部下たちが一斉に晴彦に頭を下げる。
これもまた毎年お馴染みの光景だった。