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青い欲情~男と女の色模様~
第15章 告発状
息子の明人がバタバタと階段を降りてきて
洗い物をしている清美に見向きもせずに
「いってきます」の言葉だけを残して
さっさと飛び出してしまった。
『まったく…我が家の男たちは愛想ないんだから…』
その点、大森先生は、こんな既婚者の私に優しく接してくれるわ…
清美はアンサンブルの訪問着に着替えて
最後に家を出た。
心の中に、今朝の告発状が頭をよぎった。
もしかしたら誰かに大森先生との密会を見られたのかしら…
夫の春彦は私を疑っているかしら…
それでも、大森先生を求めてこうして会いに出かけてしまう。
誰かに見られていないかしらと
辺りをキョロキョロしてしまう。
運良くタクシーが通りかかったので
清美は慌ててタクシーに乗り込んだ。
『大丈夫、誰にも見られていない
これからも上手くやり過ごさないと…』
告発状の事は単なる悪戯と誤魔化し続けようと心に決めた。
元日ということでタクシーは割高になっていたけれど、人目を避けるために清美はそのまま大森先生宅までタクシーで移動した。
到着すると
再び人目を避けるように足早にマンションに飛び込み彼の部屋のインターホンを押す。
訪問することを告げていたので
インターホンの応答よりも早くドアが開かれた。
「明けましておめでとう、待っていたよ」
そう告げる大森先生に
新年の挨拶もせぬまま彼の腕の中に飛び込んだ。