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青い欲情~男と女の色模様~
第15章 告発状
「あら?あの人って…
明人のお姉さまじゃないの?」
突然立ち止まった僕の視線を追って、
美波も沙織の存在に気づいたようだ。
文化祭で一度だけ顔を合わせただけなのに
美波は沙織の事をしっかりと覚えていた。
「年始のご挨拶だけでも…」
人混みを掻き分けて沙織の方に歩きかけた美波を、僕は力ずくで引き留めた。
「いいんだ、どうやらおねえさんも誰かと初詣みたいだし、邪魔しちゃ悪いから」
僕はそう答えるのが精一杯だった。
沙織の隣で肩を並べて歩いていたのが父親だったから、僕は少しショックを受けた。
ただ並んで歩いているだけじゃない。
父は沙織の肩を抱いて頬を寄せ合うようにデレデレしていた。
その姿は上司と部下ではなく、完璧に愛人関係を匂わせていた。
『沙織と父は…単なる上司と部下じゃないのか?
あの二人は…デキてるのか?』
そんなことを考えると
自然と無口になってしまう。
「どうしたの?具合でも悪い?」
青ざめた僕を見て、美波が心配してくれた。
「うん…なんだか人の熱気にやられちゃったみたい…
誘っておいて悪いんだけど、今日はここでサヨナラしてもいいかな?」
気を抜くと涙が溢れそうなので
そう言うのがやっとだった。
「わかったわ…私も帯が苦しくて…
またLINEするからね」
そうやってとりあえず僕らは神社を出たところで別々の帰途についた。