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青い欲情~男と女の色模様~
第20章 最終学年
その夜の夕食はお通夜のように静かだった。
もともと食事時は会話禁止という厳格な父だったので、会話がないのは当たり前だけど
僕は美波の妊娠のことをどうやって切り出そうかとそればかり考えて食事が喉を通らない。
「明人くん…お口に合わなかったかしら?」
いつもの食欲旺盛な僕の箸が進まないものだから
沙織が気づかって声をかけてくれた。
口に合わないもなにも
ほとんどが、いや、全てが冷凍食品なので
毎晩のようにずっと同じ味だ。
「ううん、そんなことないよ
美味しいですよ」
無理やり笑顔を作ろうとしたけれど
顔がひきつってものすごく不細工な表情になっているのが自分でもわかる。
「イヤなら食わなくてもいい」
ぶっきらぼうに冷たく言い放つ親父だけど
自分だってあまり食が進んでいないじゃないか。
そりゃあ、料理自慢の母さんと比べたら
沙織が可哀想ってもんだ。
もしかして、父さんは母さんに戻ってきてほしいんじゃないのか?
そんな疑問がわき起こったので、
僕は美波との事を告白しなきゃいけないのに
「ねえ、どうして母さんを真剣に探さないのさ」と
見当違いの発言をしてしまった。
「探そうと思えば興信所を使うなりして
いろいろ打つ手はあると思うんだけど」
僕の発言に、今度は沙織の表情が曇った。