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青い欲情~男と女の色模様~
第21章 最終章
僕はトボトボと一人で部屋に戻っていった。
僕には将来を約束した美波がいる。
そう思えばこそキツイ建設の仕事も頑張ってこれたのに、美波に捨てられるなんて思いもしなかった。
長距離恋愛って上手くいかないと、何かの雑誌で読んだ記憶がよみがえる。
読んだ当時は「何をバカな事を書いているんだ」と鼻で笑っていたけど、
あれって、けっこうマジな事を書いていたんだなと、今更ながらショックが大きかった。
部屋の前にたどり着くと
部屋の中から笑い声が聞こえた。
てっきりバラエティー番組でも見ながら母さんが一人で笑っているのだと思った。
息子がフラれたというのに気楽なもんだなと
僕は心の中でムカついた。
もしかしたら美波と破局すれば、僕を独り占め出来るかもしれないと母さんは呑気な事を考えているのだろうなとその時は思った。
「ただいま…」
ドアを開けると、玄関には男物の靴が一足脱いである。
『来客?』
まさかと思った。
だって、この部屋の事は父さんと美波にしか教えていないんだから来客なんてあるはすがなかった。
楽しげな母さんの笑い声に混じって
これまた聞き覚えのある声がしてきた。
そう、それは紛れもなく離婚したはずの父さんの声だったからだ。