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A crescent moon
第11章 愛愛
「あの…」

俺が言うと、顔を上げにこりと笑う。

「ご用件は?」

「あっと…〇〇社の佐々木ですが…営業部の崎本さんは…」

「少々お待ちくださいね。」

社内電をかける彼女の綺麗な指先、伏せた長いまつげ、白い頬をじっくりと見た。

「…佐々木様。佐々木様?」

彼女の声にハッと顔を上げると、首をかしげて俺を見ていた。

「13時にお約束の佐々木様ですね。崎本は15 階の会議室でお待ちしているとのことですが。」

「あっ、え、そ、そうでした。えっと…」

何とか話をする機会がほしかった。
考えをめぐらせていると、隣の女性が口を挟んだ。

「分からないんじゃないかしら?松方さん案内して差し上げたら?」

「あ、はい。では、こちらへどうぞ。」

先輩なんだろうか。
きびきびした口調に、松方と呼ばれた女性はゆっくり立ち上がり、こちらへ回ってきた。

微笑んで手をあげるとエレベーターに促された。

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