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A crescent moon
第12章 再起
明るく言う彼女の背中を見ると、私も頑張ろうと思える。

ここにいる人たちは何かしら過去を持っている。

それに触れられたくない人、さらけ出している人、色々なスタッフがいる。

紀子さんは一度流産して、自殺を図ったことがあるらしい。
彼女はそれを隠すことなく、傷ですらオープンにしていた。

私は..
まだ、左手の傷を隠していた。
傷は浅かったけれど、舞台用のファンデで隠しながら、殆ど長袖しか着ない。

けれどここは居心地が良かった。

理由はそれぞれだけど、みんな何か心に暗い部分を持っていることが実感できるのは、今の私にとって慰めになっていた。


「…でさ~旦那が言うわけ!『お前、もっと女らしくしろよ。』って!ひどくない!?あんたの収入が低いから私が働いてー」

「紀子、飲みすぎ。」

興奮する紀子さんを奈津さんが諌める。
私はいつもの雰囲気に笑いながら、どこかほっとしていた。

今日は良子とタクトさんが家にいない。
Sound Boxの仲間の結婚式らしく明日の夜に帰ってくるはずだった。

私はあれから足を運んだことはないけれど、良子はたまに顔を見せているらしかった。
それでも普段は早めに帰ってきて、私が不安なときは一緒に寝てくれる。

良子に頼りきっている私は、先日住むマンションを決めてきた。
来週には引っ越す予定だ。
良子はきっと止めるだろうから、直前まで言わない。
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