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A crescent moon
第12章 再起

「ね、美和ちゃんは?」
「へ?」
「お・と・こ!」
「ああ~」
奈津さんの言葉に苦笑いを返すと、しまった!という顔をした。
「ごめん、美和ちゃんたしかー」
良子の友人から話を聞いていたのか、チラリと指輪を見てから口をつぐむ。
私は慌てて作り笑いした。
「もう大丈夫ですよ!ただ、出会いがなくて。もうこのまま一人でも良いかなって。」
嘘。
本当は誰かに頼りたい。
彼のいなくなった隙間を埋めてくれる人がほしい。
でも恋愛に踏み出せない自分が、出会いを求めている時点で矛盾している。
「…美和ちゃんモテるだろうし、すぐみつかるわよ~三十路で独身なんて辛いわよ~?」
「奈津先輩、自分の実体験ですか?」
紀子さんが茶々を入れると、もうっとビールを飲んだ。
「じゃあお疲れ~!」
「お疲れ様です。」
駅で二人と別れ、私は人通りの少ない道を住宅街に向かって歩いた。
(寒いな…もうすぐ冬か…)
10月の風が私の短い髪をサワサワなでる。
長かった髪は、今ではショート。
あの頃の自分と決別しようと思って切ったくせに、なかなか変われない自分がもどかしい。
「~~♪~~~♪」
閑散とした住宅街を通り抜けながら、恐怖を振り払うように鼻歌を歌う。
(何の曲だったっけ?ミスチル?いや、違うな…)
思い出せない。
確か正弘さんが好きだった曲だ。

