この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
A crescent moon
第3章 悪夢
昔のことを思い出していると、耳にある会話が入ってきた。
「ヨシキ~あの話ほんとお~?」
「ああ。」
「じゃあ私は芸能人の女になるってことね~!!」
「誰が俺の女だよ。」
「もう~またそんなこといって~」
「つうかお前誰だっけ?」
私はふと後ろを振り返った。
けばい女の人が真っ赤な顔をして、帽子を目深にかぶった男に鞄を投げつけた。
「さいってぇ!!」
「…」
男の顔にガツンと当たり落ちた鞄を拾うと、女は泣きながら走っていった。
顔をぐいっとぬぐい、上げた顔に私ははっとなった。
(昨日の…!!)
しかし男は私の顔を覚えていないのか、チラッと一瞥してから反対方向に歩いていった。
私が立ち止まっていると、正弘さんが振り返った。
「なに?」
「…ううん。なんでもない。」
(一晩の女じゃ覚えてないか…でも何気にショックかも。)
目の色は黒だった。
でも帽子からちらりと見えた髪は綺麗な金色。
おそらくヨシキで間違いない。
(芸能人…になるってことは…デビューか何かかな。)