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A crescent moon
第16章 遥走
「寂しかった?」

ヨシキが少し困ったような顔をして立ち止まると、私の頬に手を当てた。

「ううん。仕事だもん。」

その手に自分も手を重ねて私が強がって答えると、ヨシキが意地悪な顔つきてニヤリとした。

そのままぐいっと顔を引き寄せられ、額にヨシキの帽子のツバが当たった。

「ちょっ、ヨシキっ!ひ、人が見てるからっ!」

「本当に?平気だったの?」

慌てる私に構わず、わざと聞いてくる。

そんなの、答えなんて分かってるはずなのに。

「…ちょっとだけよ!ね、もう離してっ!誰が見てるか、わかんないんだから…」

顔が熱い。

間近でヨシキを見るのはまだ慣れなくて目をそらすと、ヨシキはクスッと笑って離れた。

「もう…」

ぶつぶつ文句を言う私の隣でヨシキはずっと笑っていた。

こういうのが幸せなんだろう。

口元が思わず緩む。

…私はいま、本当に幸せだ。

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