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A crescent moon
第5章 過去
『なんやゆうたかね?』

「ううん..」

『とにかくなぁ、あんたあんな素敵なジェ..ジェントメン?やったか..』

「ジェントルマン?」

『そや、ジェントルメンや、婿さんなるたぁ、幸せもんじゃで?』

「....」

『たかが喧嘩で夜中ぁ抜け出すたぁ、美和が悪いんやし。もうしたあかんよ?』

「....」

ジューッと肉と野菜が焼ける音に紛れて、お母さんの声が遠くに聞こえた。

『美和?聞いとる?』

「..あ、うん。」

『全く、しっかりしぃや?』

呆れた声に、私は携帯を耳に当てたまま無意識に頷いていた。

『あ、そういやな。仙道君が美和が元気か心配しちょったぞ。』

「仙道君が…?」

私はアノコトを思い出して胸が苦しくなった。

『あの子もそろそろええ年やけんど、女の子ば連れて歩きよんのば見たことないわ。あんたと一緒になったらええ思てたんやが、正弘さー』

「ごめん、もう夕飯だから切るね!また帰るから。」

『ほうけ?ほんま早よ帰ってこんね。まっとるよ、父さんも…』

「分かってるって。じゃあね。」

私は急いで電話を切った。


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